─好きな所だけ見て盲目になるのが恋。

嫌いな所も含めて相手を見つめるのが愛。

曖昧にダラダラ続くのが情。

結婚に憧れなんて持たない方がいい。

愛なんて綺麗なもんじゃない。

お互いを傷つけ合ってドロドロに汚していく。

結婚は人生の墓場なんてよく言ったものだね─


今より幼かった私に母が言ったこの言葉。

私の心にいつまでも深く杭を打つ呪いの言葉。


いつか愛する人と結婚して、その人の間に子供が生まれて、子供を育み愛を育みながら幸せに暮らす。

まるで御伽噺のような綺麗事塗れの未来。

これが幼い私の夢だった。


私の両親は喧嘩ばかりだった。

私たちが寝静まった頃にダイニングで喚き合う。

これが私の家庭だった。

不満は確かにあった。それでも幸せだった。

確かに私は両親に愛されていた。

今でも誇るべき両親だ。


だが両親は夫婦としてはどうだったのだろう。

きっと幸せな時もあったのだろう。

価値観の違いなどですれ違う事もあるのだろう。

きっとそれが当たり前なのだろう。

いつまでも仲良く笑顔の絶えない家庭。

そちらの方がありえない。

そんな事は分かっている。


いつか自分の家庭を持ちたい。

その気持ちは未だある。

だが、苦しいばかりの結婚生活は恐ろしい。

あの頃の母の年齢に近づいてきてる私。

子供にあんな言葉が言えてしまう程に母を追い詰めてしまう結婚というものが恐ろしかった。


同年代の子達は既に結婚していたり、子供がいたり、結婚を見据えたお付き合いをしていたり、結婚に前向きだったり。

何故みんな恐れず進めるのだろう。

自分が自分では無くなるかもしれないのに。

結局、臆病でワガママな私は前にも後ろにも、どこにも行けない。

何がしたいのか自分でもよく分かっていない。



でも1つだけ分かるのは、結局ワガママな私は誰かに愛されたいのだ。

家族愛でも友愛でもない。

狂おしい程に、息もできない程に、愛されたいし愛してみたいのだろう。

そして、そんな愛をくれる人を手離したくないから結婚したいのだろう。


あぁ、本当に母の言った通りだ。

愛なんて綺麗なもんじゃない。

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