崩壊
三百二十四日。
彼と恋人になってからそれだけの月日が経っていた。
彼の恋人になった日のことは今でも強く覚えている。
ずっと好きで仕方なかった彼に受け止めてもらえて嬉しくて仕方なかった。
それからの毎日は幸せで、浮ついていた。
だけど、人間の心は移り変わる。
彼は私をあまり見なくなった。
彼が多趣味なことは分かっていた。
いつかまた私を見てくれる。
そんな風にいつの間にか自分に暗示をかけ続けていた。
でも私はある日SNSで彼がほかの女の子と二人で出かけていたことを知ってしまった。
特に困ったことは彼に浮気の自覚がないことだった。
問い詰めても「友達だから。」で終わる。
友達なら何をしてもいいの?
ざわついた何かが私の胸に燻り、次第に彼に対する思いが冷えていくのを感じた。
思えば告白したのも私からだった。
付き合ってから連絡するのも私からだった。
もしかしたら私よりもずっと先に彼は冷めていたのかもしれない。
きっとこんな不安はいつまでも消えないのかもしれない。
それなら私がこれからするべきことはもう決まっていた。
彼とあと何日一緒にいられるかわからない。
いつか来る別れを受け止められるよう覚悟を決め、偽りの表情で塗り固め、自分を欺き続けよう。
そうしないと彼を待ち続けるだけの私は壊れてしまうから。
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