高嶺の花

"好き" "僕も好きだよ"

画面上で繰り返される好きの押収。

口元はにやけ心は満たされるのに彼の目を見て、体に触れて伝えることが出来ないことが酷く寂しい。

私達は数千キロの距離に阻まれ、今では誰もが持つこの機械だけが私たちを繋いでいた。


彼のSNSを見て、メッセージを送って、声を聞いて。

前はただそれだけで幸せだったのに

一度彼に会って、彼の温もりを知ったあの日からどんどん欲張りになり、もっと会いたいとばかり思う私がいた。


"会いたい" 一言のその言葉は彼にとって喜んでもらえるものなのか、鬱陶しく感じるものなのかいつも考えては口を噤んで飲み込んでしまう。


あぁ、なんでこんなに遠い人を好きになってしまったのだろう。

優しくて好きなものに真っ直ぐで人気者。

私とは正反対で眩しい人。

どんどん私から離れていってしまいそうな人。

繋ぎ止めることが出来ない人。


ふと誰かが言った「傍にいてくれる人と付き合えばいいのに。」

そうだけど、そうじゃないの。

好きになった人が遠い人だった。

ただそれだけだった。


あなたと出会ったあの日から私の好きは一つも変わることは無い。

むしろどんどん膨らんで破裂してしまうくらいよ。


私にとってあなたは高嶺の花。

いつかあなたが私から離れていくその日まで。

どうか愛でるにも満たない、こんな形でしかあなたに思いを伝えることのできない私をほんの少しだけでもいいから愛してください。


そして、もし一つだけ願いが叶うならば、私が朽ち果てるその日まであなたの隣であなたをいつまでも愛せますように。


あなたを心から愛しています。

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