第14話確信
「明さん、結婚してるの?」
何気なく喫茶店でみさきは、明に聞いた。
「一応ね。別居状態。だから離婚してるようなもの。結婚してるけど何か問題ある?」
「いや…。」
あまりにペラペラと本音を話す明にみさきは、唖然としてしまった。
「じゃあ、わたしって不倫してる事になるの?」
「まぁ…。そうかな、でも深く考えなくて良いよ。」
「え?」
「嫌なら別れても良いよ。」
涼しい表情をして明は、言った。
夢だった…。
夜中に冷や汗をかいてみさきは、起きた。
何も約束していない事に不安を初めて感じた。
聞いてしまったら不倫だったらわたしは壊れてしまうのか?
明さん…。
今日こそ聞こうと決めた。
不倫は犯罪だ。
待ち合わせした駅前で明はいつもの笑顔である。
喫茶店に入るとデジャブをみさきは、感じた。
「あのさ、知りたい事あるんだけど…。」
「何かな?」
「もしかしてお、奥さんいる?」
泣きそうだ。負けるな自分。
深いため息を明は、して
「うん実はね。」
と言った。
やっぱり…。
「でも、妻はもう5年間眠ってる。」
え?何?それ…。
「事故に遭って植物状態なんだ。」
「植物状態?」
頭の中が不倫と植物状態でみさきは、こんがらがっていた。
「これ以上、俺との関係持ちたくないなら、良いんだけど。」
明の寂しそうな顔を初めて見た。
「奥さんに会わせて。」
みさきは、自分でも何を言っているのか分からない。
「良いよ。ついて来て。」
総合病院は都内から少し離れた丘のうえにひっそりとたたずんでいた。
明の呼吸がおかしい…。
「大丈夫?」
「あぁ、でも、手を繋いでくれないかな?怖いんだ。テレビドラマみたいだろ?妻が植物状態なんて。今でも眠っているとしか思えなくて…。」
震える明の手をみさきは力強く握りしめた。
「大丈夫。わたしがいる。」
綺麗な個室に眠っているのは白雪姫のような女性だった。
「妻のまこだ。まこは、」
「綺麗な人ね。」
「あぁ、ありがとう。事故に遭った時のまま歳を取らないように変わらないんだ。不思議だろ。」
みさきは、まこの手を握った。
温かい…。
「まこ…。俺のいや、僕の大切な人を連れて来たよ。」
明は、まこの耳元で囁くように言った。
「みさきに会うまで僕は妻を放置していた。現実から逃げていたんだ。みさきはまこにとても似ているんだ。」
「まこさん…。初めまして香川みさきです。」
とみさきは、自己紹介をした。
まこは、静かに眠ったままだった
反則だよ、植物状態の綺麗な人にわたしが勝てるはずないよ。
明は、いつもと違いオロオロしていた。
そんな明をいとおしく思った…。
決して彼は悲劇のヒーローではなかった。
敗北も知っていてそこから立ち上がる勇気と力を持っていた。
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