第13話露見
5-13
フライパンの意味が判った廣一、だがこの写真の数々は廣一には相当なショックだった。
あのサプリもこの柴田から買ったのだ。
もう絶望なのか?自分に比べて若い、マッチョで肉体も素晴らしい、この柴田と付き合いながら、私に抱かれる美由紀は?
「あっ」お金を巻き上げられているのだ。
最近の服装も少し悪い、夜勤のバイトをして「デリヘルより、収入が良いのよ」と話していた。
結婚の為にお金を節約している様には見えない。
それなら品物を買う必要が無いからだ。
それじゃあ、騙されているだけのなか?そう云う自分も蓄えが無く成って、もう通帳には二百万しか残っていない。
美由紀がもし自分の様な年寄りで禿げて不細工な男を、好きに成ってくれたら結婚しても良いと最近では考えていた廣一なのだ。
そこにこの写真の衝撃は半端では無かった。
その時廣一はまだ自分の事より、美由紀が騙されて、身体を酷使して稼いだお金をつぎ込んでいる事の心配をしていた。
もう、一千五百万以上を使っていた廣一なのに、まだ美由紀の心配をしていたのだ。
三ヶ月の空白の時期が、廣一に美由紀に対する愛情を芽生えさせてしまったのだ。
遊びから好きに成り、今では愛していたのだ。
自分は捨てられても良いから、彼女だけは不幸に成って欲しくない廣一は毎日携帯で友達を調べた。
柴田以外誰も美由紀の事を掲載している人は誰も居なかった。
この柴田はとんでもない悪だと廣一は思う、例えば美由紀とのラブホの写真を掲載したら、もし今後彼女と別れたら、この写真は不特定多数に見られるからだ。
この男は何を考えて居るのか不思議だった。
廣一も隠し撮りで美由紀のヌードも持って居たが、勿論誰にも見せない。
この柴田は美由紀を食い物にしていると廣一は決めつけた。
伊豆の修善寺に行く時に色々聞いて、もし聞く耳を持っていたら忠告しなければと思うのだった。
加藤、小池、最上に販売をするが中々他の人には広がらない。
松本も宮沢も彼女達を自分達の彼女にする程興味は無かったのだ。
美由紀の知り合いも中々買ってはくれないし、集会には参加しない。
一番の友達の由美は毛嫌いしている。
「私は、美由紀には柴田さんは合ってないと思うわ」
「何故よ!由美も最初は山下さんの事、嫌いだったじゃない」
「それは家族の人が良かったのよ、美由紀は会ったの?家族の方と?」
「会ってないわ」
「じゃあ、自宅に行った?」
「彼、友達と同居しているから、来ない方が良いと言うのよ」
「そうかな?何か他に理由が有るのじゃあ?」
「何も無いわよ、由美は自分が結婚したから、私の彼にケチを付けているの?」
「何故よ、私は美由紀の事を心配しているのよ」
「放って置いて、由美には関係無いわ」
その口論から、二人は話しをしなくなってしまった。
廣一も美由紀と会う前日、柴田のサイトに表示されていた自宅を探しに向かったのだ。
どの様な住まいなのか?見れば大体その人が判し、生活水準も判るからだ。
自分の住所とか、健康診断書まで自分のサイトに掲載しているのは、多分騙す為に必要だからだろうと廣一は考えていた。
住所を探して見つけたその建物は、廻りを見渡してもこれ程見窄らしい建物は無いと云う程汚らしい、ワンルームのアパートだ。
柴田の部屋から二人の男が出て来た。
この部屋に三人も住んで居るのか?
表札代わりに名刺が押しピンで留めて有って、その中の一枚が柴田幸宏と書いて有るが、もう薄汚れて、色が変わっていたのだ。
廣一は、フライパンの世界の話しではないな、とても付き合う相手ではない。
ましてや、結婚する相手とは思えないのだ。
何も知らない素振りで新幹線のホームで待つ廣一、時間ギリギリに走り込んで来る美由紀、何となく窶れた感じに見えた。
(こだま)で熱海迄行って(踊り子)で伊豆稲取迄。
車内で廣一は美由紀に、予め週刊誌のマッチョの写真を用意して「こんな、男性は魅力感じる?」と聞くと、週刊誌をのぞき込んで「大好きよ、この筋肉痺れるわ」と言った。
「これも、ライオンの鬣とよく似ていると思うよ」
「何よ、それ?」
「強く見せる見栄とか威圧感を出す為、心の弱い人が多いのでは?」
「そうなの?」
「入れ墨も同じ様なものだよ、自分を大きく見せたい象徴かも知れない」
「私はね、沢山の男性を見て来たから、よく判るのよ、貴方の意見は違うと思うわ」
いつの間にか美由紀はマッチョを柴田に置き換えて話しをしていた。
「誰か結婚でもしたい人出来たの?」
「そりゃ、もう三十一歳に成るからね」
「でも両親に反対されたら?例えば相手の人がお金も仕事も無かったら?」
「そんな人は相手にしないわよ」
「もし、好きに成ったら?」
「そうなったら、出来ちゃった婚でもするかも知れないわ」
「私の様な、年寄りは?」
「柏木さんとは特別な関係よ、秘密のね」
「それって?」
「闇の人よ」
「じゃあ、いつまでこの関係を続けるの?」
「貴方が私に会いたく無くなるか?私が結婚した時ね」
「じゃあ、何年先か判らないね」
微笑んで「そんな事無いかも知れないわ」
廣一は総てを知っていたが言えなかった。
今言うと旅が終わりそうだったから、いつもの様に二人はSEXで燃えた。
彼氏が居るのに、この美由紀って何を考えているのだろう?と不思議に思った。
廣一は帰りの電車で別れる時間を測りながら「こんな、画像見つけたのだけれど」と柴田とのツーショット写真を見せた。
「。。。。。。」それを見た美由紀は凍り付いた。
「何で?貴方が持って居るの?」
「偶然、見つけたのだよ」その後の美由紀は喋らなく成った。
電車が熱海に到着すると、さよならも言わずに急いで新幹線のホームに走っていった。
上りの新幹線の時間が無かったのも有ったが、頭の中が混乱していたのだ。
廣一はこの結末は予想していなくて、何度もメールで呼びかけても返事は無かった。
翌日夕方、もうお別れしましょう、さようなら。。。。。。。それだけの返信の後、メールもラインも電話も切断してしまって、連絡の出来ない状態に成った。
廣一には何かいい訳とか話しをすると思っていたから、その後の美由紀の態度は違った。
それほど大きかったのだろう、翌日には柴田のサイトの総ての美由紀の写真が削除されて閲覧出来なく成っていたのだ。
明らかに柴田に私の話が伝わっていると思った。
数日後には、美由紀は友人達に、ストーカーにつけ回されて困っています。
私の事を聞いてくる人が居ますが相手にしないで下さいとメールと電話で伝えていた。
勿論柴田にも、病院の患者さんで退院したのだけれど必要に誘うのよ、貴方のサイトも見ているのよ、統べて消して、話しかけられても相手にしないでってお願いと伝えていた。
由美には本当の事を話さないと由美から総てが露見すると思って、最近話しをしなかったからだ。、
由美に「少し、時間いいかな、話が有るの」
「何?柴田さんと別れた?」
「違うわよ、柏木さんが柴田さんの事知ってしまったの、だから絶交したの、フェイスブックの友達検索で知ったから、由美にも問い合わせが有るかも知れないの、だから無視して欲しいの」
「逆じゃないの?柴田と別れて柏木さんとなら判るけれど」
「何、言っているの?禿の年寄りでデリヘル通いの爺と何故私が一緒に成るのよ」と大きな声で怒る。
「目を覚ました方が良いよ、柴田は駄目だと思うわ」由美がそう言うと、いきなり由美の頬を美由紀が叩いた。
「馬鹿にしないで!貴女はお金持ちの家に嫁に行って、何故?私が私が。。。。。」そう言うと泣きながら病院の廊下を走って行った。
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