第12話知った秘密

5-12

その美由紀が翌日「由美の家、一度も行ってないわね、今度の休みに行くわ」

「は、はーい」

急に時間が出来たのか余裕なのか、それは廣一とまた直ぐに会うから、幸宏のお金が心配無くなった安堵感からなので根本的には同じなのだ。


数日後白金台のマンションの近くに来た美由紀が電話で「この辺りに、由美のマンション有るの?」

「今、何処よ」

「高級マンションが沢山有るけれど、無いわよ」

「コンビニが有るでしょう、その横の道に入って、迎えに行くから」

「こんな、場所に安いマンション在るの?買い取りでしょう」

「うん」とは返事はしたが、此処に来ると気が狂う?巧美は仕事で居ないから良いけれど、この後が恐い由美なのだ。

ケーキの箱を持って歩いてくる美由紀に「此処よ」と手招きをする。

マンションを見上げて「これ?なの?」と驚きの表情の美由紀だ。

入り口にはセキュリティの部屋、美由紀は呆れて声も出ない。

「本当に、此処に住んで居るの?」

「そうよ、十五階」

美由紀は自分の寮に有る電化製品で由美に優越感を持った事も有ったのに、エレベーターに乗っても殆ど喋らない美由紀、空気に圧倒されていたのだ。

部屋に入ると素晴らしい丁度品、大きなテレビに、大きな寝室、そしてベッド、もう美由紀には別世界なのだ。

「此処から、病院に勤めているの?」

「そうよ」

「馬鹿じゃないの?幾らお金持って居るのよ、あの巧美さんが持って居たの?宝くじが当たった?」

「違うわよ、巧美さんの両親が買って下さったのよ」

「何している人よ、こんなマンション息子に買うなんて」

「前にも話したわよ、お父様は商社の重役さんよ」

「由美は玉の輿なの?あのチンピラの親父が金持ちだったの?」

「その様だわ」

由美がコーヒーを作っている間、美由紀は部屋中を見て廻って「これって億ションって物ね」と呆れた様に言うのだ。

意外とすんなりと帰ったと由美は思ったが、美由紀は柴田の言葉を思い出していた。

「MMSのトップセールスマンは年間軽く億は稼ぐのだよ」の言葉を、幸宏に頑張って貰えば夢ではないわと考えながら帰って行った。

あり得ない事を夢見ていた。


幸宏も美由紀の写真とかを友人達に見せる様に成っていた。

始めは猫を被っていた美由紀だが身体は多くの男性を知っていたから、幸宏を喜ばすコツを心得ていたのだ。

何度かベッドを共にして、幸宏も美由紀の身体が忘れられなく成っていった。

商売を抜きなら美人だから、相当整形はしていたのだが、それを知っていたのは由美だけかも知れない。

矯正歯科も春で終わって、綺麗な歯に成って美由紀は完璧だと思っていた。

由美に大きく負けた気持ちは、幸宏の出世で取り返そうと、知り合いとか同僚に次々と勧誘を始めた。

美由紀に由美は怖ささえ感じたのだ。

自分でも必要の無い物まで買い込んで助ける。

その為には廣一にも、会う回数を増やす必要が有った。

廣一に会うと「フェィスブックを教えて欲しい」と言われたが「私も、そんなにやらないのよ」と上手に断る美由紀だが、廣一は美由紀のサイトは既に知っていたが、でも見る事は出来ない。

「貴方との関係が病院の人に判ると、困るのよ」

「何故?」

「だって、愛人の様な付き合いだから、デリヘルで知り合わなかったら、絶対にあり得ない付き合いよ」

「私は独身だし、貴女の話は誰にもしてないから、デリヘルの事はもう忘れたよ」

しばらく別れてまた戻った二人は噛み合わない時が多く成った。

三ヶ月の間に廣一は色々調べて居たから、友達の由美さんの事も時々美由紀が話したので調べていた。

「次回会うと、次は誕生日が来るね」

「早いなあ、三十一歳、嫌だ-」

「プレゼント何が欲しい?」

しばらく考えて「フライパンが欲しい」

「えーフライパン?」

「良い、フライパンは長持ちするし、料理も上手に出来るのよ」

この時美由紀の頭に幸宏との新婚生活を夢見ていたのだ。

廣一には何故?フライパンとの疑問だけが残ったが、地元のデパートにフライパンを見に行く廣一は哀れだったのだ。

来月伊豆に行く予定の廣一は、フライパンを買って持って行こうか?悩んでいた。

荷物に成るし、誕生日が終わって会う時に一緒に都内のデパートに行けば、好きなのを買うだろう、二人でショッピングも楽しそうだと、自分で勝手に夢を描いていた。


幸宏と美由紀はその後も近くの、ラブホに行ったり、飲みに行ったり、殆ど美由紀が代金を支払っていた。

廣一に貰ったお金が統べて二人のレジャー費に消えて、サプリとか化粧品とかの購入代金は美由紀の給与と蓄えから出ていた。

病院の掛け持ち勤務で身体はボロボロ、疲れはピークに達していた。

服もブーツも節約して買わない、幸宏は自分のマンションには一度も美由紀を呼んでなかった。

友人三人でワンルームに住んで居たから、とても呼べる状態では無かった。

MMSの収入では生活が出来ないし、勿論貯蓄はゼロなのだ。

それでも、美由紀には見栄を言っていたのだ。

都会では車は不便だから持たない、実家では弟が自分の車を乗っている。

親父は小さな会社を経営していると、実際は小さなクリーニング店をしているのだ。

大手の安いチェーン店に顧客を取られて、青息吐息の状態、弟幸司が水道工事の会社に勤めて家計を支えて居るのが現実だ。

幸宏はヤクザな仕事をしているから、幸司だけが頼りだと両親には言われていた。


その幸宏が、結婚するかも知れないと電話をしてきたのは、十一月の始めだった。

それはお金を欲しいと云う事、両親も何度も騙されていたからだ。

「娘さんを連れて来たら考えるよ、それより、まだあの詐欺の様な仕事をしているの?」

「立派な会社だよ、外国の資本だけれど大きいのだよ、お母さんが知らないだけだよ」

「お前が、知り合いを騙すから、肩身が狭いわ、友達も居なくなったでしょう」

「保険会社も同じだよ、最初は知り合いに頼むのだよ」

「馬鹿な、お前の仕事はネズミだろう、怒っているよ、みんな」

「判ったよ、近日中に連れて行くよ、びっくりするよ、綺麗から」

「何処の飲み屋の子を連れて来るのだい」

「違うよ、看護師さんだよ、それも大きな病院の」

「珍しいね、期待しないで待っているよ、お前に騙される女だから、馬鹿だろうけれどね」

母親の富子は幸宏に厳しい、これまで散々騙されたから、もうコリゴリの気持ちの表れなのだ。


廣一は自分の部屋で携帯の操作をして、フェィスブックを見ていた。

美由紀のサイトはこれなのだが、入れないのだよね、その時サイトに侵入出来たのだ。

そこには彼女の友達の名前が一杯並んで居た。

「わー、凄い」と独り言を言いながら、コピーをして、順番に友達のサイトを調べていった。

その中に見てはいけないサイトが有って、柴田幸宏のサイトだった。

美由紀と仲良く写る写真、美由紀だけの写真、数カ所の旅行に行った写真、ラブホの写真まで、五十枚位の写真だった。

今年の春から最近までの日時が掲載されていた。

廣一はもう唖然として、中には廣一が美由紀に送ったネックレスの写真も数枚有った。

この柴田は細かくサイトに掲載していた。

仕事がMMSと記載して有るから、どの様な会社だとネットで調べると「これって、ネットワークビジネス?」と独り言を言う廣一だった。

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