第11話再会?再開?

 5-11

何度も廣一からメール、電話が掛かるが、着信拒否、メール、ラインは接続を切る徹底振りに、廣一も諦め顔に成るのだ。

そうなると心に穴が開いた廣一、毎日が唯、呆然と過ぎて行く。

美由紀が去って、失意の底の毎日に成ったのだった。

本当に別れたのだろうか?もう会わないのだろうか?

疑心暗鬼の廣一に母の眞悠子が「最近元気が無いわね、彼女と喧嘩でもしたの?」

「まあ、そんな感じかな」と答えるのが精一杯だった。

数ヶ月前にタイまで旅行に行ったのに本当に不思議なのだ。


美由紀は念願の柴田との肉体関係に成っていた。

大阪のユニバーサルジャパンに美由紀が誘ったのだ。

これを柴田は待っていたのだ。

女性が痺れを切らせて求めてくるのを、美由紀は夏の賞与で旅費の総てを出した。

廣一が連れて行くホテルとは段違いに悪かったが、二人分の旅費と遊ぶお金は結構沢山必要だった。

自分で出して見て初めて、廣一と行った各地が高かったと実感させられたのだ。

でも分厚い胸板は想像以上に抱きしめられて興奮する美由紀だったのだ。

SEXも相性としては最高とまでは行かないが、我慢が出来る相手だと思うのだった。

一番は年齢が近い事、そして沢山の男性を見て来て、自分の目が確かだと自信が有ったのだ。

直ぐに美由紀の身体を求めて来ないのも、美由紀には新鮮に思えたのだ。

人を見る目なんて、その時々で変わる。

良い関係でも、ある日些細な事で嫌な物が目に付く様に成って、その逆も有るのが人間なのだ。

廣一に対する美由紀は最初から否定で始まっていた。

顔、姿、年齢、風俗で遊ぶ男と自分が働いて居るのに、遊ぶ男を軽蔑しているのだ。

柴田が美由紀の店の客で来ていたら、好きには成れないのだから、人間とは不思議な動物だ。

旅行から帰ると、早速柴田の要求が始まって、それは美由紀が無理をしないで買える金額の物を買わせるのだ。

三万が限度なら三万迄買わせてそして少しずつ増やして行くのだ。

このサプリをもう一ヶ月続けて飲めば効果が表れます、医者の出す薬の効果は高いが身体には良くない、これは身体に優しいからと進めるのだと言った。

早い話有効な成分が微量だから効果が無いと云う意味だが、良い様に聞くから不思議なのだ。

こうして色々買って遊びにも行くから、お金が必要になる美由紀は、三十歳で風俗にも行けないから、節約をして買いたい服を買わないで、総てを柴田につぎ込むのだ。

それでも困った美由紀は病院の夜勤の掛け持ちと云う仕事をするのだ。

病院に見つかれば解雇に成る危険な事なのだが、友人の紹介で始める。

柴田との結婚を夢見て、それでも柴田の売り上げの為にサプリとか化粧品を買い続ける。

二十歳前半なら、この時点で気が付いただろうが、三十歳を超えて由美の結婚も有ったので、廻りが見えないで、柴田の甘い囁きだけを頼りにはまり込んだ世界なのだ。


三ヶ月で精神的にも肉体的にも限界に近づいていた。

夜勤が続く、遊ぶ気力も無く成る美由紀、頭に廣一の事が浮かんだ。

久々に温泉に行きたい、美味しい物を食べてゆっくりしたい、遊んでも幸広さんには見つからないわ、彼は闇の人だから、五年間見つからなかったから、お金もピンチだから、廣一ともう一度付き合うかな?美由紀の性格は判らないのだ。

由美も柴田と付き合うのは、お勧めでは無いと思っていたが、自分が巧美と幸せな姿を見せつけたのも悪いと反省をしていたのだ。


巧美の両親は二人に高級マンションを買ってくれて、金銭の援助も半端な金額では無かった。

「巧美には内緒にしてね、お金が有ると使いたがるから、将来必要に成ったら使いなさい」巧美の両親はそう云って大金をくれたのだ。

元々大企業の重役だから、お金は沢山持っているとは判っていても、これには驚く由美だった。

美由紀は反対にお金に困っていた。

普通の生活なら、看護師の給料で充分なのだが違った。

由美は結婚してから夜勤の仕事を辞めた。

巧美とすれ違いを避ける為で、寮から高級マンションに引っ越した由美を美由紀は一度も尋ねて来ていなかった。

それ程忙しくて、寝る時間が少ないから、少しの時間でも眠るのだ。

「身体を壊すわよ」と由美が忠告するが聞く耳を持たないのだ。

美由紀は廣一と再会を目論むと、タイムラインに書き込んで廣一が見るのを待つ、それを何度も繰り返すのだ。

もうすぐ五十一歳の廣一と三十一歳の美由紀、由美はこの事実を知ったのはしばらくしてからだった。

その時はもう戻れない坂道を転がっていた二人だった。


(お元気でしたか?)

(病院は暇な時間が無いわ、東京に来たら、またお酒でも飲みに行きましょう)

(はい、連絡します)廣一には美由紀が戻ってきてくれた事を喜んだ。

(今までの様に旅行に行きませんか?近場に)美由紀はこれを待っていた。

いきなりSEXしましょうは言えないから、お酒でもと控えめに言ったのだ。

上手に予想通りの展開に、ほほ笑む美由紀、日時を決めて箱根に行く事にする。

幸広の売り上げを助ける為に頑張らないと、温泉にも行きたい美由紀なのだ。


箱根の旅館で高級旅館の旅を思い出す美由紀、毎日飲んでいるサプリの容器を取り出すと「それは?」

「サプリよ、健康の為に飲んでいるのよ、貴方と別れる前より肌綺麗でしょう?」

殆ど変わらないと思ったが「うん」と答える廣一だ。

「看護師なのに、何故?」

「この薬は身体に優しいのよ、だから良いのよ」

「そうなの?」

「これ、高いのよ!一粒七十円もするのよ」

「わー、その容器一杯だから、凄い金額だね」

「そうよ」

お菓子の様に飲む美由紀、廣一には不思議な光景だった。

美由紀には久々の廣一とのSEXだったが、燃えたので合うわと心で思っていた。


廣一にお小遣いを貰って見送ると、早速幸宏に電話で「化粧品で今月の売り上げ助けるわ」

「ありがとう」

「品川で会いましょう、友達と箱根に行って来たのよ、お土産有るから」と話して、夕食を食べて、遊びに行く、お金を渡して喜ぶ幸宏の顔に美由紀は満足をしていた。

これなら、楽出来るし美味しい物も食べられし、温泉にも行ける。

幸宏に見つからない様にしなければと気をつける。、

総てが駄目になると思う美由紀に「今度、名古屋の家に一緒に行こうか?」と幸弘が言った。

「えー、本当」美由紀は有頂天に成っていた。

これは、結婚を前提の挨拶に行くのだわ、嬉しい、いよいよ、結婚かの気持ちに高ぶるのだ。

由美に翌日「柴田さんに、プロポーズされたのよ」

柴田を信じていなかった由美は驚きの表情に成った。

「驚いた様ね、貴女が結婚して私だけ結婚しない訳無いでしょう」そう言って笑った。

私のマンションにも来てない美由紀だ。

私が彼の両親から五千万も貰ったと知ったら、気が狂うのでは、そう思うとマンションに来なくて良かったと思うのだった。

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