『私』を忘れないで

 田中芳樹さんの『タイタニア』という小説に『ファン・ヒューリック』という人物キャラが登場する。

 銀英伝におけるヤン的な役回りで、彼がどのような活躍をするか、僕は楽しみだった。

 しかし、3巻で中断した時点で、彼と敵対者かたきやくであるタイタニア陣営の因縁が薄くなったのに、僕はうん?と思いました。

 で、その後21世紀にアニメ化されたのように再開。

 ぼくの危惧は最悪の形で、実現してしまう。

 そこに描かれたのは、インに話である『タイタニアの内紛』に便乗する脇役となってしまった彼だった……。




 ところで『アルスラーン戦記』完結しましたね。

 いろいろあって、30年近くかかった作品だけで、僕は不安だった。

 銀英伝を書いた作家の作品なら面白いはずだが、遺憾なんねんなことに創竜伝や薬師寺涼子シリーズが間に挟まってる、と言えばなんとなく伝わるだろうか?

 特に、印象的な敵役『ヒルメス』の扱い。

 ネタバレを避けつつ言うと、最終巻の一つ前の『戦旗不倒』で、彼は最終巻にかかわるある重大なできごとを成してしまう。

「あれ、この展開で、ヒルメスの出番終わってない?」

と、僕はタイタニアのことを思い出して、不安が心の中に広がっていった。

 そして、今月(2017年12月)、最終巻『天涯無限』発売。

 予想は的中。

 インである『アルスラーンブイエス蛇王ザッハーク』の脇で右往左往する彼が、そこにいた。

「まあ、ギスカールよりは扱い、良いから……」

と、僕は自分で自分を慰めるしかなかった。

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