童貞★ぷりてぃハニー

あえば

第1話 わーきんぐほりでー

婉曲的な表現としてDTと書くと、なんとなく生易しい感じがする。

ちょっとおふざけで、という感じ。本来のポテンシャルはあるんだけど、たまたま、偶然彼女がいないというニュアンスがある。


しかしこれが「24歳童貞」という字面になってくると事態の深刻さが若干異なってくる。この言葉からはどうしようもない気持ち悪さが滲み出ていて、液体のりでしわしわになった紙のような不快感がある。これは、そのワードの響きが単に「しかるべき年齢にも関わらず性行体験持たない」という意味を持っているだけでなく、小便臭い小学生がそのまま大人になっているという、生臭い人間の匂いが漂ってくるからに他ならない。


当の本人にしてみても、この非情な事実と相対する時はいつも自己の社会性に何らかの瑕疵がある事を否定することができないでいる。次第にこの忌まわしいレッテルは精神に沈着し、粘着質な精神性を形作るのだ―――」


とか、そんな事を考えていたある夜の日。僕の部屋にクソ気持ち悪い毛むくじゃらの球体が舞い降りてきた。はじめてそれを見た時は、とうとう僕も精神がやられてヤバい幻覚が生じてきたのかと思ったけど、どうも僕の妄想ということでは片づけられない現象のようであったから、とりあえず話だけでも聞いてやるかという気分でそいつの動態を見守った。そいつはまずこんな感じだった。


「よお、童貞ニート君。俺は君のクソにみたいな生活を変える救世主だ。」


僕は当然黙っていた。次にこの気持ち悪いのはこんな事を言ってきたのだった。


「突然だけど、君。魔法少女にならねぇかい」


「ならねえよ。」


つい口から言葉がでた。


その後、非常に長い動揺と困惑を抱えつつも、この謎の物体が喋る事を聞くしかなかった。そして、その顛末を先に記すと、僕は魔法少女になることになった。あ、いや待て。少し話の展開が早急すぎたかもしれない。ちゃんと書こう。

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童貞★ぷりてぃハニー あえば @Aeba_ec

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