【番外編】マグリナ様による勢力図解説

 この世界は様々な勢力の思惑が絡み合って複雑だろう?

 そろそろ読者も頭が混乱してきたのではないかと思ってな。ここで私から読者向けに組織の解説を入れてやろう。特別サービスだぞ? メモの用意はいいか?


【帝国】

 レイグや私が所属する、巨大な領土と多くの植民地を持つ国家だ。


 皇帝を中心とする権力体勢を構えている。

 なるべく皇帝に気に入られるよう振る舞うのが政府内で昇進するコツだ。そのせいで私は精神をかなり削ったがな。


 世界一の人口を持ち、魔術を中心とした軍事力も発展している。

 そのため国内は物の需要が多く、それを満たすべく多数の地域に向けて植民地支配政策を開始した。そのせいで各国と様々な問題を引き起こしているがな。


 本気を出せば機関銃を開発できるほどの技術力が帝国にはある。

 それでも開発に着手していないのは、魔術で強化した弩の方が強いからだな。鎧や城壁を軽く貫通する威力を持つ歩兵装備だ。


 読者の中には、現代武器を異世界に持ち込めば無双できる、という安直な考え方をしている者もいるかもしれないが、それは大きな間違いだ。

 特に、この世界では厳しいぞ。

 帝国軍や魔蟲種相手に現代武器を使っても苦戦は免れん。結構シビアな世界観だろう?







 さて、次は帝国と敵対する【三大反抗勢力】の説明だな。


【農民戦線】

 帝国が植民地支配する地域に創設された、農民で結成された反抗グループだ。

 帝国や他の抵抗勢力ほど軍事力は発展していないが、戦闘員と農民の区別がしにくくて厄介だな。ただの農夫かと思ったら、いきなり農具を振るってくる。この不意打ちのせいで、帝国軍の犠牲者も多い。


 ちなみに、レイグと同じ囚人部隊に参加しているデリシラとかいう灰狼女は農民戦線リーダーの娘らしい。頭はあまりキレないが、身体能力は凄まじいと聞いている。巨大な戦斧を自在に操って戦うようだな。


 それと、農民戦線と我々が敵対している理由だが……帝国は彼らの土地が欲しいのだ。いや、土地というよりはそこに育つ作物だな。

 軍事用の保存食に欠かせない香辛料や、帝国内で需要の高まってきた紅茶の栽培に適している。私もあそこで育てられた紅茶を子供の頃から飲み続けているが……あれは美味いな。


 我々はその土地の利用権や作物の価格設定権を巡って対立しているのだ。あの美味い紅茶を飲み続けるためにも、どうにか彼らを我々の支配下に置いておきたい。



【精霊解放軍】

 森精霊族を中心に結成された反抗組織だ。


 帝国は彼らの住む森から採れる木材が喉から手が出るほど欲しい。

 そこの木材は神秘的な魔力を帯びていて、それが材料に使用された物は耐久性能が素晴らしいのだ。帝国内の高級建築や商業用輸送船、軍艦、武器……あれを用いて作りたい物が我々には山ほどある。経済と軍事の発展には欠かせない木材だ。


 だが、そこに住む森精霊族は簡単に渡してはくれなかった。その森は彼らが長年守り続けてきた大切な住処であり、命に代えても守るべき財産らしい。


 彼らの戦闘スタイルはどの勢力よりも厄介だ。森林の中に設置された大量の罠が我々の行く手を阻む。さらには魔獣を笛で操り、こちらへ向かわせてくる。弓による遠距離射撃も恐ろしいな。そのせいで我々が倒せた精霊解放軍メンバーの数は極端に少ない。

 そこの木材は貴重であるため無闇に森林へ火を放つわけにもいかず、我々は物量で押し切るしかない。


 ちなみに、そこに所属するユーリッドという男だが、首領の右腕的存在らしい。魔獣の操作も弓の扱いにも長けている。ヤツだけで何人の帝国兵が犠牲になったか分からんな。


 農民戦線と同盟を結んでいて、武器の提供や情報交換を度々行っているらしい。

 目障りな連中だ。さっさと決着をつけておきたい。



【女神教団過激派】

 ルイゼラ・ハーベドガスターとかいうイカれた婆さんを主教とする団体だ。ロゼッタという女神をカミリヤという少女に憑依させて、彼女を信仰しているらしい。

 まったく、ルイゼラの考えていることは分からんな。


 帝国兵を捕らえては無残な方法で処刑し、帝都の広場に死体を晒していることがよくある。

 こうすることで兵士を女神への生贄にして、勇者として生まれ変わらせることができるとかどうとか。

 まったく、ルイゼラの考えることは分からんな。


 三大反抗勢力の中では保有している戦闘員数や支配地域面積が断トツでトップだ。

 だが、その残虐さから他の勢力とはあまり仲がよろしくない。

 当然だな。いつ自分を処刑しようとしてくるか分からないような連中と仲よくできるか。それに、彼らと同盟を結んで自分たちの評判まで下がったら困るからな。


 ちなみに、帝国と女神教団が対立する理由だが、これは建前と本音が分かれている。


 帝国の建前は宗教的な理由だ。

 皇族を絶対的な中心とする権力態勢にとって、女神を崇拝するという行為は自分たちの威厳を不安定なものにさせると心配している。


 だが、本音は違う。

 帝国は支配地域から採取できる鉱物が欲しいのだ。ルイゼラを始めとする女神教団の使う武器はここから採れる鉱石が使用されている。

 女神教団が保有する武器製造技術はかなり発達していて、ルイゼラが使う鎌も最新の付魔技術を導入して作られたんだろうな。





 それと、ついでにこれも説明しておこうか。


【魔蟲種】

 彼らは人間を無差別に殺害する謎の生物群だ。多くは昆虫や節足動物を連想させる姿をしており、様々な形態を持つ。

 彼らがなぜ人間を殺すのかは我々帝国も総力をあげて調査中だ。だがどの学者も「分からない」とばかり言う。もしかすると、人間を殺すことそのものが目的かもしれないな。


 彼らの生殖方法も一切不明。これを突き止めた者には賞金も用意しているのだがな、なかなか発見者は現れない。どこかに巣を構えているのか、それすら分からない。


 人間と同じように魔術を使う個体も確認されている。数も多いし、肉体も強靭だ。三大反抗勢力の連中より厄介かもしれない。





 さて、説明はこれくらいにしておこうか。

 帝国が全ての敵対勢力に勝つことを祈る。

 さらばだ、読者の諸君! また会おう!

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