第17話 この出来事は一生忘れない。いや、忘れられない。

「ちょ、ちょっと!あの!」

 ダメだ。力がすごすぎて振りほどけない。

「あ、俺臭かった?シャワー浴びてくるわ」

 いや、そういうことじゃないんだけど…。

 ってか、

「ここで脱ぐんですか!?」

 思わずそこにあったシーツで顔を隠した。

「だってここ脱ぐとこないんだもん」

 そういって下まで脱ごうとする。

「ちょっと待ってください!!それは、あの…あっちで脱いでください……」

 そう言うとトイレへ向かった。待って。お風呂に入るのはいいけど、ここ透明じゃん!!丸見えだし!もう、どうしたらいいの!?



 —現在4時

 仕方ないからわたしはベッドの中に潜り込んだ。あ、お母さんに連絡してない…。

 "ちょっと遅くなるかも"

 既読はつかない。

 待ってる間何してよう…。あ、そうだ。進路決めなきゃ。どこの教大がいいんだろう…ってそんな場合じゃない!はあ…。緊張してきた。好きなアイドルの動画を見て緊張を和らげよう。みんなにはバレてないけどわたしはアイドルが好き。由梨にも言ったことない。あ!新しいMVがある!

「癒される〜」

「何に?」

「え!?」

 急に視界が明るくなった。って、上半身裸!

「へー、アイドル好きなんだ。意外」

「そうですか…?あの、服は!?」

「いらないでしょ」



 わたしの頭の中真っ白。何をされてるかわかっているけど頭が追いつかない。

 ちなみに今キスされてる。冷静に見えるかもしれないけどすごく動揺している。

「次は君からしてよ」

 そう言ってわたしが上に乗ってる状態になった。


 その時、意識が戻った。あれ?わたし何してたんだ。妻帯者と一緒にホテルなんて行って。いや、違う。本当は意識はあった。それでも意識がないと自分に言い訳していた。

わたしの目から涙が出てきた。その涙が彰さんの頬に当たる。

「どうした?」

 彰さんを見ると笑顔ではないけれど、幸せという顔をしている。


「あ…の」


 ダメだ、言うな。


「どうして…」


 絶対言ってはいけない。それでも止まらない



「あ…の、どうして………結婚してるの…」



 自分の中で決めてた。結婚というワードを使ったら終わり。


 自分自身が傷つかないため


 涙が止まらない。最低だ。全て自分で決めたことなのに。


「帰ります」


 わたしは足早にカバンを取り、部屋を出た。

 こんな最低な奴に追いかけて来る者なんかいない。時計を見ると、時間は5時半になっていた。意外と時間は経っていない。

 全て上手くいくと思っていた。どこかで離婚してくれるんじないかと期待を抱いていた。そんなことを考えるなんてやっぱり子供だ。


 でもわたしはあの人を愛していた。




 18歳の誕生日の前日わたしは泣いている










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る