第15話 カフェと匂いとあなた
—最後のクラス替えの日
「やっぱりすごい人だよ!」
クラス替えの用紙はなぜか小さいので全く見えない。
「由梨、ちょっと見てきて!」
「えー?遥見てきてよー!」
「じゃあ、一緒に行こ」
「うん!」
「すみませーん」
人を掻き分けながら徐々に前に行った。
「あ!同じクラスだよ!」
「やったー!」
由梨はもう、諦めてと言わなくなった。
なぜかはわからない。
「ただいまー」
「おかえりー!どうだった?新しいクラス」
「由梨と同じクラスだったよ」
「良かったじゃない!」
「うん」
「じゃあ、受験生なんだから勉強してきなさい。夕飯になったら呼ぶから」
「わかった」
よし、勉強してこよっと。
今日は苦手な数学から取り掛かろう。
ピロン♪
誰だろう?由梨かな?見てみるとそこには"高峰彰"と書かれていた。
なんて書いているんだろう…。恐る恐る表示ボタンを押した。
"久しぶり、なんて書けばいいかわからなかった。暇な日、話したい"
"わかりました。土曜日はどうですか?"
わたしは何も考えず、フリック入力で文字を打った。そしてすぐ返事が来た。
"ありがとう。じゃあ2時にあそこのカフェで"
カフェは初デートの場所だ。懐かしく思える。
—そして土曜日
「行ってきまーす」
「行ってらっしゃーい」
お母さんには由梨と勉強会すると言った。なんで勉強会なのにそんなにオシャレしてるのと聞かれたが上手く誤魔化した。
歩く足が速くなる。なんか緊張する。
カフェに着いた。意を決して入った。
「いらっしゃいませー、お一人様ですか?」
周りを見渡しても彰さんの姿がない。
「はい」
「こちらへどうぞー」
若い女性のスタッフが案内してくれた。
「こちらメニューです。お決まりになりましたらそちらのボタンを押してください」
慣れた口調でスラスラと言っている。
何にしよっかな…あ、このココア美味しそう。ボタンを押そうと思った瞬間、
「もう来てたんだ」
久しぶりにこの声を聞いた。入り口のドアに背を向けて座っていたので全く気づかなかった。
「お久しぶりです…」
「久しぶり…何頼んだの?」
「まだ頼んでないです…」
「そっか…」
なんか話しづらい。
「こんなこと言うのもあれだけど、ここ出ない?人が多くて話しづらいし」
「わかりました…」
そして彰さんの車に乗った。車の匂いが変わっている。前は普通に話せたのに今はなんだか話しにくい。
10分くらい無言の時間が続いた。
「よし着いた」
降りて着いたのは、海だった。
「ごめん。君に現実を突きつけてしまって。あんなことになるなんて思いもしなかった」
「謝らないでください。あなたは何も悪くない!」
「ごめん…」
わたしは咄嗟に抱きしめた。なんで抱きしめたのかわからない。5分間ずっと抱き合っていた。
「行こっか…」
また車に乗り込んだ。
現在の時刻3時半
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