第14話 女の勘と記憶力、なめんなよ

 もう逃げ切れない

 この状況をどうするか—



「彰くん、何してたの?」

「家に忘れ物し…」


 目が合った


「そろそろ、家に帰りますね!それじゃあ」

 これ以上ここにいると涙が出てきそう。

「あ!ちょっと待って。友達の家なんだから一緒に食べに行かない?」

 行くはずないじゃん。

「すみません、家で母が待っているので…」

「そっかー。あ!そうそう、これうちの

 本日2回目の発言。

 てか旦那だっていうこと知ってるし。

 でもここではこうしなくちゃいけない。

 わたしは笑顔で言った。


「どうも、初めまして」

 苦しい

「どうも…」

 目を合わせられない

「それじゃあ、帰りますね」

 さっさと帰りたい

「じゃあまた会ったらご飯一緒に食べようね」


 この人は悪くないのに。


 この人といると、自分が嫌な人間になってしまう。


 わたしは涙を流し、走りながら帰った。



「ただいま」

「おかえりー。ちょっとあんた!汗すごいよ!?」

「ちょっと走って帰ってきちゃって」

「さっさとお風呂に入りなさい!今準備するから」

 母は焦りながらお湯の温度を設定している。

「お母さん、色々ありがとう」

「いいから、入って!」

 そんなことを言っていても少し嬉しそう。

「はーい」


「あがったよー」

「夕飯まだ食べてないでしょ?ほら食べて」

 なぜか今日は豪華なメニューだ。

「どうしたの、こんな料理」

「今日、特売日だったの!だからたくさん具材買っちゃって」

 よかった、帰ってきて。

「すごく美味しい!」

「当たり前」

「ハハハ!」

「ねえ…遥はさ、将来何になりたいの?」

「最近、教師になりたいなーなんて思ってて…」

「そうなんだ。いい夢じゃない」

「でも、大学ってお金必要じゃない…?」


「そんなこと気にしないの!親はね、子供にいつだって幸せになってもらいたいんだから!子供の不幸なんて絶対に見たくないもの」


「ありがとう」

「ふふ、じゃあ勉強頑張ってくださいよ」

「うん!」


 わたしは本格的に教師を目指すことに決めた



「山中さん、それでは進路教室に来てください」

 今日は、先生との面談の日だ。

「失礼します」

「えっと…山中さんは、進路希望調査によると、教師と書いていますね」

「はい。高校の教師になりたいです」

「わかりました。それでは、どこの教育大学にしますか?」

「そうですね…たくさんありすぎて迷っている途中です」

「山中さん、結構いい成績だから、こことかいいんじゃないんですか?ここなら家から通えますし」

「そうですね…親と相談してみます」




 そんなこんなで、高校3年生になった




 彰さんと1回も連絡を取らずに




















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