第13話 逃げることが可能でもそうできない状態になってしまった
突然の事で頭が回らない。
じゃあ、由梨はいつから気づいていたの?
だからあの時、応援できないって言ってたの?
でも、諦めてほしくないけど諦めてほしいって言ってたよね?
あれはなんだったの?
もうわからない
「それ…本当なの……?」
「うん…その従姉妹の、やっちゃんっていうんだけどね…私にすごく優しくて、小さい頃からずっと遊んでくれたの。私にとってはすごく優しいお姉ちゃんみたいな人だった」
「そうだったんだ…」
「だからね、遥…お願い……」
今まで見たことがないくらい由梨の顔には涙がたくさんある。
今なら由梨の気持ちがわかる。
苦しい
「あ、お母さんに醤油買ってきてって言われてたんだ。1人1本だから遥と一緒に行こうと思っていたの」
「え?あぁ、いいよ。行こ」
変な雰囲気のまま、スーパーへ向かう。
無言でひたすら歩く。
どちらも口を開こうとしない。
その時
「あれ?由梨??」
綺麗ってほどじゃないけど優しそうな人がいた。
「あ、やっちゃんだ…」
この人が……
「由梨!久しぶり!!あれ?友達?こんにちは」
「こ、こんにちは…」
動揺しすぎて、なんだかクラクラする。
「やっちゃん、何してるの?」
「どうしたの由梨?なんか顔青いよ?熱でもあるんじゃない?」
「ううん!全然無い!元気元気」
「そっか、今からどこ行くの?」
「スーパー。お母さんに醤油頼まれてて」
「そうなんだ!由梨のお母さん懐かしいな、ねえ!今日行ってもいい!?旦那連れて」
あ……
「う、うん。いいよ」
「じゃあ、後で連絡するわ。じゃ!」
「ごめんね、うちまで来てもらっちゃって」
「ううん、いいよ。これ重たいし」
「勉強教えてくれてありがとう」
「ううん、こちらこそ。それじゃあ、帰るね」
「うん…バイバイ」
はあ、なんか今日は疲れた。
身体というより心が。
「あれ、由梨の友達?こんな暗い時間に何してるの?」
下を向いていたので見上げてみると、やっちゃんがいた。(ごめんなさい、あだ名呼びで)
「あ、今醤油買ってきて、由梨の家に運んでたんです」
「ごめんね!わざわざ。あの子、運動していたのに握力はないのよねー」
あ、そっか…。小さい頃から遊んでたんだもんね…。でもなんか気にさわる言い方。
「そうなんですか…」
「うん…てか、あれ?」
そう言うと、突然やっちゃんが叫んだ。
「彰くーん!!??」
そうだった。
この人、彰さんの奥さんだった。
まずい、逃げなきゃ。
でもどうやって逃げよう。
ここで逃げたら明らかにおかしい。
そう迷っていると
「そんな大声出すなよ」
聞き慣れた声がわたしの耳に入ってきた。
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