第10話 何十万年かかってもリセットできる世界はつくれない

 —午後3時

「よし、着いた」

 着いたのは商店街のような所。

「へー。こんな所あったんだ!」

「初めて?」

「はい!」

「よかった」

 私は、こういう所に来たことがなかったのでワクワクしている。期待してよかった。



 テレビで見たことあるような店がたくさんある。

「すごいですね、ここ!」

「俺ここ好きなんだよねー、月10くらいでくる」

「ハハハ!毎週来てるじゃないですか」

「確かに」

 この笑い合ってる時間が幸せだ。



「この店、俺のオススメ」

 入ってみると雑貨たくさんあって、オシャレな雰囲気のお店になっている。

「商店街にもこんなお店あるんですね」

「最近できたんだよ」

 お店に入ると、可愛いネコの形をした芳香剤ほうこうざいがあった。

「あれ?この匂い…」

「ああ、それうちの車の匂いと一緒」

「やっぱり!なんか嗅いだことある匂いだと思いました」

「それが俺の1番気に入ってるやつ」

 —奥さんが決めた匂いじゃなさそう…って、こんなこと考えるの止めるって決めたじゃないか!

「いい匂いだし買おっと」



 —午後6時

 商店街は、すごく楽しくて時間が過ぎるのがあっという間だった。

 そして、家に送ってもらった。

「今日はありがとうございました」

「いいえ」

「あの、また出かけませんか?」

「おう!じゃあ休みになったら教えるわ」

「わかりました!」

「今日は多分疲れてるだろうから、子供はさっさと寝るんだぞー」

 —またでた、子供というワード



「わたし、子供じゃないです」

 


わたしは片手で高峰さんが着てるシャツの襟をつかんで強引にキスした。

「すみません」

 わたしは車から降りてから家の鍵を開け、自分の部屋に入った。



 わたしなんであんな事しちゃったんだ。

 単に子供扱いされたから?

 奥さんの事を考えるたびに嫉妬してたから?

 わからない。

 


—だって子供だもん—



 高峰さんに出会う前に戻りたい。


 全てリセットしたい。



 —月曜日

 放課後、わたしはいつものバイト先に向かった。

 裏でコンビニの制服に着替えてると村沢むらさわさんが話しかけてきた。

「遥、なんか顔暗くない?」

「そうですか?」

「うん、いつにも増して暗い」

「それって、わたしいつも暗いってことですか?」

「ハハハ!違うよ、冗談冗談。なんかあった?」

「まあ、はい」

「話してみ、今休憩中だから時間あるし」

 村沢さんはやっぱりお姉さん的存在だ。



「というような事があったんです」

「なるほど…わたしもそんなことあったわ」

「あったんですか!?」

「うん、15の時に既婚の家庭教師に本気で恋した。二人で遊園地とか図書館とか行ったりしてすごく楽しかったんだけどね、その様子を奥さんが頼んだ探偵に撮られてたの。」

「え……それで、どうなったんですか?」

「二人は離婚。それが学校でも広まってさ、ついたあだ名が"不倫女"」

 そう笑いながら話してくれた。


「村沢さんは、奥さんから何もされなかったんですか?」

「一回会った時に即ビンタ。その人、小さくて可愛らしい人だったから全然痛くなかったけどね」

「やっぱり不倫ってダメですね…」

「んー、私が言える立場じゃないけどさ、別にいいんじゃない?私はもうやらないけどね。もう時間になる!よし、行くよ!!」



 村沢さんってなんかすごい。

 もし、誰かに尊敬される人は誰かと聞かれたら真っ先に"村沢さん"と答えるだろう。










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