第9話 夢と希望が詰め込まれたポケットはまだない

はる、なんか昨日から上の空じゃない?」

「え?そう?」

「うん、いつもより口角が上がってる」

「なにちょっとそれ、気持ち悪いじゃん」

「ハハハ!そうだ、わたしね」

 由梨ゆうりが苦い顔をしている。


「東京の大学行こうと思ってるの」


「え…」

「わたし、将来弁護士になりたいの」

「そうなんだ…弁護士になろうと思ったのさきっかけは?」

「わたしの家、お父さんもお母さんも弁護士なの。お母さんはもう退職したんだけどね。それで、ずっと見ててカッコいいなーと思って…」

「そうだったんだ。行ってきなよ!東京!応援するから!」

 由梨は嬉しそうだがどこか悲しげな表情で"ありがとう"と言った。

 わたしは将来の事なんてあまり考えたことない。

 そろそろ考える時期だ。



 ピロン♪

 高峰さんからLINEがきた。

"明日土曜だからこの前言ってたかカフェ?行く?"

 "行きます!"

"何時がいい?"

 "1時くらいですかね?"

"じゃあ1時に迎えに行くな"

 "ありがとうございます😊"

 高峰さんから可愛いOKというスタンプがきた。わたし今、顔がすごくにやけてる。

 明日は母も父も仕事だから高峰さんとの事はバレない。



 —翌日

 高峰さんから"着いたよ"というメッセージがきた。

 鍵を閉めて向かう。

「あれ?車なんですね。徒歩かと思ってました」

「ご飯食べた後、一緒に行こうと思ってる所があって」

 車に乗るといい匂いがした。大人の匂い?みたいな。

 あ、でもこれ奥さんが選んだのかな…

 ダメだ。こんな事考えてたらキリがない。今日は考えるの止めよう。



 カフェに着くと店員さんからメニューを渡された。

 —うわ、結構高い

「あの…わたしケーキでいいです。」

「なんで?朝いっぱい食べちゃったの?」

「いや、そういうわけではないんですけど…」

「あー、値段とか気にしなくていいよ。まだ子供なんだから」

 —子供じゃないし

「じゃあ、カルボナーラで」

「それもうまそー。俺ナポリタンにしよ」



 頼んでから20分後くらいに届いた。

 それまではお互い話すこともなく、スマホをいじっていた。

「いただきます………ん!美味しい!」

「ほんとだ、めっちゃうまい!」

「来てよかったー」

「それはよかった。そっち一口ちょうだい」

「え…はい。どうぞ」

 お皿を渡すと私のスプーンを"貸して"と言ってそのまま食べた。

「やば!このカルボナーラめっちゃうまいじゃん!」

「あ…ですよね」

「どうした?顔赤いよ?」

「いや……なんでもないです」

 —顔が赤いのは、あなたのせいだよ!!

「こっちも食べる?」

「いや…大丈夫です……」

—これ、間接キスになるじゃん!

「あの、なんで私のスプーンで食べたんですか?」

「だって、ナポリタンのケチャップがそっちに入っちゃうじゃん」

 —そんな理由!?

この人はカッコいいのに天然が入っている。



 カフェを出て車に乗った。

「すみません、奢ってもらっちゃって」

「いいのいいの。未成年に金なんか出させられないよ」

 —でた、子供扱い。確かに未成年だけど。

「じゃあ、次行きますか」

「はい」

 連れて行きたい所ってどこなんだろう。

 ちょっと期待しとこ。





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