第6話 恋に落ちるのは一瞬の出来事

村沢むらさわさん、お客さんが携帯置いていったみたいなので届けて来ます」

「え?忘れたと思って来るんじゃない?」

「さっき出ていったので、まだ近くにいると思うんです」

「そっか。じゃあ、いってらっしゃい!」

「すぐ戻ります!」



 ほんとにすぐ近くにいた。

「お客さまー!」

振り返ってくれないので、目の前にいった。

「あれ?シャンプーの子、どうしたの?」

「あの、お客さま…これ、忘れ物です」

「ああー、忘れてた。なんで携帯忘れたんだろ。ごめんね、わざわざ」

「いえ、大丈夫です」

「じゃあ。ありがとね」

 そう言うと歩いていった。

 そしてわたしは、ふと口からこぼれた。



「あの!わたし、シャンプーの子じゃなくて、山中 はるといいます!それじゃ。」



 わたしは足早にコンビニへと戻った。

あれ?わたし何を言ってるんだろう。

相手がどんな顔をしているかわからなかった。というより、見れなかった。



 それから1週間経った。あの人は一度もコンビニに来てない。



 —夜

「はあー、疲れた」

「お疲れ。ほら、ココア飲みなさい」

「ありがと」

「そういえば最近、ちょっと太った?」

「え!?お母さんいきなり何言い出すの」

「まだ9時だからロンの散歩行って来なさい」

ロンとは、家で飼ってる犬の名前だ。

しかし疲れてるのに散歩に行かせるなんて。うちの母は、結構鬼だったりする。

「ほら!さっさと準備して!!」



 てなわけで、嫌々散歩にいくことになった。

 それから15分くらい経った頃、少し疲れたのでベンチで休むことにした。

由梨ゆうりからLINEが来てたので返事をしていたら誰かが話しかけてきた。



「あれ、シャンプー……じゃなくて…ハルちゃんだ。何やってんの」



 え?誰?顔を見上げるとあの人がいた。

それより、名前で呼んでくれた。一瞬シャンプーの子って言いかけてたけど。

「あ、こんばんわ。えっと、今犬の散歩してて休憩してます」

「へー。あ、ほんとだ、犬見えなかった。俺も犬飼ってたなー」

「そうなんですか」

 あの時以来だから妙に緊張する。

「そういえば、久しぶりだね」

「そう…ですね」

「1週間ぶりくらい?」

「はい…多分」

「俺、出張行ってたんだよね」

 —出張だったんだ、ホッ。

 え?なんでわたしホッとしてるの!?

「あ、見たいテレビ始まるから、そろそろ行くわ」

「わたしもそろそろ家に帰らなきゃ」

「それじゃ。あ、それと俺の名前、高峰たかみねあきら。高いっていう字に峰不二子の峰、それとアキラは、章末の章に三本線いれたやつ。そっちは?ヤマナカハルってどうやって書くの?」

「えっと、普通の山に真ん中の中で、ハルは…こういう字です」

 説明ができなかったので携帯で打った。

「なるほどなー。じゃあね、遥ちゃん」

「さよなら、えっと…高峰さん」

「おう」



 そして家に帰った。

「どうしたの?そんなにボーっとして」

 返事もする余裕もなく部屋に入りベッドに潜った。

 わたしは由梨に即LINEした。



 —わたし、恋に落ちたかもしれない












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