天使降臨・終幕へと

途中経過ーⅡ

 九名いた参加者も、戦争七日目にして四人が脱落。

 リブリラの永書記えいしょきと孤高の重複者じゅうふくしゃと、まぁ脱落して当然と言える弱者が早々に消えたのはそのままに当然としよう。

 しかしこの早期段階で、ベルサスの異修羅いしゅら

 そしてヴォイの骸皇帝がいこうていが死んだのは想定外であった。

 この二人が早々に消えたことはこちらとしても吉報であるが、しかしあまりにも早い脱落には少々拍子抜けさせられた。

 あの天使からしてみれば、結局狂気に狩られた異形の修羅も不死身の皇帝も、ただの人という見解だろう。

 彼女は偉業の種も何もかもをひっくるめて、地上の生物すべてをまとめて俗物アリと吐き捨てるのだから。

 さてその彼女は――そう言えば、参加者が残り五人になったところで出ると言っていたか。

 ということは、いよいよあの大陸も滅亡か。永い時を生きる大陸だったが、仕方ない。

 彼女の前では、どれほど偉大な大陸もただの土台だろう。

 そういえば、懸念材料がもう一つ。

 例の裁定者さいていしゃはどうなったのだ。

 重複者の情報から正体は知れたが、おそらく召喚士しょうかんしが召喚した者。だがその意図が読めない。

 わざわざ裁定者役の天使を殺してまで、首なしの裁定者を送り込んだ意味は何だ。

 骸皇帝に捕らわれていると聞いているが、もしかしてそれも何かの狙いなのか。

 召喚士の頭脳はIQ換算したことがないためにわからないが、天界でも随一と言って過言ではないだろう。

 例外ミ・ティピキィと呼ばれる三体の天使の中でも、実質最も権力を持っているのも納得の頭脳でこれまでも天界の危機を救ってきた。

 彼の見解を聞きたいのだが、しかしどういうわけか雲隠れ。

 今回ばかりは納得いかぬと、天界の中でも彼を指示する者としない者とでの内紛が起きつつある。

 まさか、この天界を堕とす気ではあるまいに。

 だがそれをしてしまえる力と頭脳が、彼にはある。警戒すべきか。

 元々何を考えているのかわからない男だ。警戒して損はないだろう。今までの実績など、今回の騒動を考えればゼロになったと思えばいい。

 さて、いよいよ戦争も終局に近付いた。

 首なしの裁定者。それと堕天使を倒すべく大陸に降りた最高位天使の一角と、参加者以外もこの戦争に参戦している歴代の中でもまた特質のあるこの戦争も、そろそろ局面が最後へと向かいそうである。

 さぁ戦え、戦士達。

 すでに決定された未来へと、何も考えず、構わず歩き続けるがいい。

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