主人公の視点から語られる「姉様」は話を通して絶対的な象徴である。あまり触れるとネタバレになってしまうので言及は避けるが、姉様の語り口調や立ち振舞などが、この話をホラーとして相応しい色に染めているように思う。それでありながら、主人公が終始感じている「幸福」があるため、一人称で語られる世界はとても優しい。甘い優しい世界と恐怖の世界が隣り合わせになることによって、独特の雰囲気を損なわずに最後まで読めるようになっていると思う。
悪夢の中を旅させられたような短編小説です。日常から、すっと夢幻の世界に入り、そこでぐるぐる出口がなく彷徨う感じが、面白いです。たぶん、話は、読者のみなさんが思いもよらない方向に転がっていくはずです。終着点がどこに行くのか――皆さんの目で、たしかめてください。
昭和の古き良き情景に、憧れの象徴のような女学生のフセさん。そして大きな犬の八房(秋田犬でしょうか)。ノスタルジックな中に織り交ぜられるホラーファンタジーに夢中になりました!妖しさと無邪気さ、残虐さがそれぞれのキャラクターに秘められていて、魅力的でした。また彼らが彼ら同士、慈愛に満ちている様子が伝わりました。個人的にこういう雰囲気が大好きなので、読み返させて頂きます(ノ´∀`)ノ
美しくもグロテスクで血なまぐさい、極上の悪夢のような作品です。エピローグでスッキリと目が覚めていますが、後味の悪さは残されています。悪趣味で身も蓋もない、けれどどなたにも読みやすく作られていて、そこも凄いなと思います。振り切る事と同じくらい、バランスを保つこともまた難しいのだと。