雨の中のきみ#49

数日後、わたしはいつも通り授業を受けている。隣では莉々が黙々と手を動かしていて、わたしも珍しく寝ることもせずに手を動かしたり授業を聞いたりしていた。

授業が終わった後、莉々が不思議そうにわたしを眺める。

「由依、なんかあった?」

「なんかって?」

「いや、最近授業中起きてるし間宮さんの話しないし、どうしたのかと思って」

「間宮さんは引っ越していたよ。だからもう会うことはない」

「そうなんだ? 結局最後まで正体不明のまま?」

正体はわかったけど、それはおいそれと話せることではない。だから莉々には

「そうだね。結局よくわかんなかったや」

と曖昧な答えを返して会話を打ち切った。莉々は心配そうにわたしを見ているけど、今はまだ元気になれる気がしない。それほどまでに間宮さんとの別れはわたしの中で大きな出来事だった。

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