雨の中のきみ#46
翌日、いつも使っていた折り畳み傘は昨日の逃走中に投げ出してしまったため普通の傘で早めに大学に行く。間宮さんはいつもの場所でちゃんと待っていてくれた。
「おはよう、間宮さん」
「おはよう、笹垣さん。体調は大丈夫か? まだ怖かったりしないか?」
早速間宮さんの質問攻めにあう。この人は今までこんなにもわたしのことを大切に思っていてくれたんだ。そう思うと自然と頬が緩む。
「心配してくれてありがとう。大丈夫だよ」
「ならいいが」
よしよしと頭を撫でられた。恥ずかしいのでやめていただきたい。
子供をあやすような調子の間宮さんは置いておいて、今後の話を進めることにしよう。父と顔を合わせるのなら誰も使っていない教室か、どこかがいいのだけれど、そんな都合のいい場所は……あった。昨日逃げ込んだ教室を使えばいい。
しかし次に父が大学に来るのはいつになるかわからない。うまく雨の日に来てくれればいいのだけれど。
「それは問題ない。きみの父親は雨の日にしか大学に来ないからな」
「なんで?」
「笹垣さんの父親は、普段は車で出勤しているが雨の日は道が混むから電車で通勤している。そのついでに大学に寄っているんだよ」
……だから間宮さんも雨の日にしか現れないのか。重ね重ね守られていたのだなと実感する。
しかしそれならば今週のうちにケリがつけられそうだ。こんなことはさっさと終わらせるべきなんだ。
「次に父が大学に来たときに勝負する。間宮さんは隣に居てくれるだけでいい」
「だがなにを話すのだ? 話してわかる手合いではないだろう。それと俺が隣に居るのはいいが、何者だと説明する気だ」
「話す内容は絶縁をたたきつける。間宮さんは友達だと言えばいい。そうでしょ?」
間宮さんは一瞬難しい顔をしたが、そうか、とだけ言って頷いてくれた。大丈夫。一人じゃないんだからなんとかなる。
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