雨の中のきみ#42

間宮さんから手紙が届いたらどうしようか。わたしも返事を書いた方がいいのだろう。ていうか書く。たとえ一行しかない手紙でも長文で返信する。正直言ってわたしも手紙を書くのは苦手だけれど、それでも頑張って書きたいと思う。

「今のうちに書くことを決めておこうかな」

そういうわけでパソコンを開いて、テキストエディタを起動する。さて、なんと書こうか。

『こんにちは。お元気ですか。わたしは元気です。今どこでこの手紙を読んでいますか? 家? 大学?』

……早速行き詰った。手紙ってなにを書けばいいのだ。自分でも碌に書けないのに人様に手紙をお願いするだなんて図々しかったかもしれない。

とりあえずこういう時はインターネットだ。と思って調べ始めたけれど、具体的な内容があまり書かれていない。感謝の言葉を伝えるとか、文法とか、シンプルで前向きなことを書くとかそういうことはいいんだよ。そんなこと調べなくてもわかっているから。

でもまあ、そりゃそうか。わたしが書きたいのは間宮さん個人に宛てた手紙であって、その解答がインターネット上に転がっているわけがない。なんでもかんでもインターネットで調べて答えを得ようとするわたしの癖が、ここにきて裏目に出ている。

そうだなあ。

『最近は蒸し暑いですね。間宮さんはいつも黒い服を着ていますが暑くないですか? わたしは先日友達と買い物に行って夏服を買いました。できれば今度間宮さんとも出かけてみたいです』

おお、我ながらいい感じ。あまり相手を気遣いすぎずに書いた方がいいのかもしれない。間宮さんの服装のこととか余計なお世話な気がするけど、それを考えだしたら永遠になにも書けないし。

その後、寝るまで三時間ほどパソコンに向かって手紙の下書きを書き続けた。これが下書きだけにとどまらず、いつかちゃんと間宮さんの元に届けばいいのだけれど。

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