雨の中のきみ#37

「さて、どうしよう」

コンビニのお菓子売り場の前でわたしは悩んでいた。一口に板チョコといってもいろいろある。ホワイトチョコか、ミルクチョコか、ビターチョコか。それがさらに各種メーカーごとにあるのだ。間宮さんの好みがわからない。わかるのはカカオ55パーセント以下が好きだということだけだ。

「普通のミルクチョコでいいかな。メーカーの好みとかもあるのかなあ」

やっぱりテレビのコマーシャルでやっていた最大手のものにしておけばはずれはないだろうか。それともなにがしかのこだわりがあったりするのだろうか。板チョコを甘く見過ぎていた。シンプルなものだからこそ味の違いは顕著だろうし、好みもあるだろう。

「作るか」

それだ。そうしよう。早速コンビニを出てスーパーの手作りお菓子のコーナーへと向かう。そこで製菓用のチョコレートと生クリームを買って帰る。既製品だと味の違いで気に入ってもらえないこともあるかもしれないけれど、手作りなら手作り補正がかかる分、採点が甘くなるだろうという卑怯な手段だ。

帰宅してから例によってインターネットでチョコトリュフの作り方を調べる。チョコレートと生クリームを温めながら混ぜて溶かして、溶けたら冷やして丸めるだけ。なんてお手軽なのだろう。

手を洗って調理を開始する。するとものの三十分ほどでトリュフはできた。あとは適当なラッピングをすれば完成だ。バレンタインの時に買ったラッピング用品を出してきてそれっぽくまとめる。

「よし、それっぽい」

出来上がりに満足して、あまりを一個食べてみる。ちゃんとトリュフの味がした。

あとはハンカチを洗濯しておけばオールオッケーだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る