雨の中のきみ#14
「最近間宮さんとはどうよ」
「相変わらず雨の日に会って雑談してる」
「進展は?」
「ない」
莉々と空き教室でのんびり話す。今日は晴れで間宮さんはいないし、三限のあとは五限でしばらく暇なのだ。莉々は論文の提出が終わったらしく晴れ晴れした顔をしている。
「間宮さんが何者なのかもわからないの?」
「わからない。それとなく聞いてもはぐらかされるか当たり障りのない返事が返ってくるだけだから、深く追求しないことにしてる」
本当は何故雨の日にしか現れないのかとか、どういう過去があるのかを聞きたいけれど、間宮さんが聞かれたくないのであれば聞かない。
「そういえば莉々は間宮さんと話したことある?」
「ないよ。最近見かけないし。雨の日でもいたりいなかったりするよね」
「え? 雨の日は必ずいると思うけど」
「え? この間の雨の日はいなかったけど」
? おかしいな。この間の雨の日は家族の話をしたはずだ。わたしは雨が降っていればバイト以外の時であれば必ず大学に来て間宮さんと会話をしている。だというのに莉々は間宮さんを見ていない? ただタイミングが合わないだけだろうか。
「そういえば、由依と一緒に居る時以外は間宮さんを見かけないかも」
その莉々の言葉を聞いて、いつか感じた背中が冷える感覚を思い出した。
わたしと一緒の時以外は間宮さんを見かけない? つまり認知、知覚できていない?
「間宮さんてちゃんと足あるよね?」
「あるよ! そりゃまじまじと足だけを見たことはないけど、たぶんあるよ」
「だよね。一瞬間宮さんは由依の前にしか現れないお化けかなにかかと思った」
いやまさかそんな。わたしは基本的に零感なのだからお化けや幽霊の類は見えない。それにあんなに普通に会話している間宮さんが幽霊だとはとてもじゃないけど思えないし。なにより間宮さんの持っていた煙草の煙が目に染みた。霊体であれば人体に影響を及ぼすようなことはできないはずだ。だから間宮さんは普通の人間だ。
「お化けや幽霊がいないとは言わないけど、間宮さんは違うって」
「そうだよね。わたしは、幽霊は基本的に信じないし、たまたまだよね」
「そうそう。そりゃ謎な人ではあるけどさ。気になるなら莉々も間宮さんと話してみれば」
「そこまで興味ない」
ばっさりと言い切られてしまった。間宮さんがいろんな人と関わるのはいいことだと思うのだけどな。それを莉々に強制するのは違うとわかっているから、それ以上のことは言わないけれど。
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