嫌悪

 潰れて壊れて死んだ。

 私の知らない間に勝手に手の届かないところに行ってしまった。

 湿った空気に混じった鼻をつく酷い匂い。

 あんな醜い物体が私の愛した姉であるのか。

「ひっ……!」

 ただ声にならない絶叫をあげ後退って、自分の体を強く抱き締めた。

「緋音先輩!しっかりして下さい。一度離れましょう」

 誰か分からない男子生徒に手を掴まれ引き寄せられた。身体中が重くて動けない。

 嫌なのに横たわる肢体に視線が這いよく似た顔と目が合う。

 正気が抜けた不気味な瞳は私の顔に焦点を結んでいた。まるで私の内心を見透かすように私の奥底を覗いている。

「ごめん……ごめん、なさ……」

 震える声で謝罪の言葉を口にした。

 微かに感じていた喜びの感情を否定出来ずに。

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