否定

 賞を取った。大会で新記録を出した。

 生徒会長を務めた。彼氏が出来た。

 全部私が眺める役をしてた。

 舞台の上を見上げて拍手を送る。

 惨め。ださい。本当に滑稽で腹を抱えて笑える。

 私でも舞台に登れるかもとか思った時もあった。

 それでも「君じゃないんだよ」の一言。

 痛くて重い視線がちくちく突き刺さる。

 そんなだったのに舞台に立つ主役がいなくなったら、掌をひっくり返して私を舞台へと押しやり始める。

 期待してなかったのはあいつらで。

 期待されたくないのは私。

「本当にもうやめてよ!」

 手を払って突き放した。

 なんで悲しそうな顔するわけ?

 全部が全部私が悪いの?

「どうしたんですか、緋音先輩?」

 そんなの私の名前じゃないのに、そんな名前で呼ばないでよ。

 本音を押し殺してばっかで押し潰されそうなのに気付いてくれる人はいない。

「俺がいますから……」

 誰もいない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る