リピート

 肌を焼く蒸し暑い夏。

 学校の屋上は涼やかな風が吹く。

「蒼依はさ、私のことどう思ってる?」

「はぁ……?突然どうしたの」

 思ってもみなかった姉の問いにすぐには答えられなかった。逡巡の後に思い口を開いた。

「好きだよ。多分……私には勿体ない良い姉」

「はは……可愛いこと言うなあ」

 照れ笑いをして指で毛先をくるくると弄ぶ。

 子供の頃からの癖。

「ありがとね、蒼依」

「?」

 意図のわからない感謝の言葉。

 宙に浮いた言葉は夏の空気に溶けていく。

 よく似た顔が目を細めて笑いかけた。

 また、一瞬だけ音が反響してなく無くなった。

 馬鹿馬鹿しい、下らない夢。

 あの時のことを今更思い出しても意味なんてないのに。

「はは……これじゃ同じじゃん」

 鏡に映った自分を見て崩れ落ちた。

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