違う

 自分の半身でかけがえの無いもの。

 疎ましくて妬ましい、私の一部。

 それを失った。私から去っていった。

 涙を流すことは無かったけど喪失感はどうしても拭えない。喪失感は圧力になって私を押しつぶそうと雪崩てくる。

 一人で歩けるのは私じゃない。

 みんなに必要とされてたのは私じゃない。

 両親の自慢の娘も学校でみんなに囲まれてるのも私なんかじゃない。

「私じゃない、私は違う。違うんだ」

 言い聞かせる。

 言葉が自分の脳味噌にこびり付いて離れないくらいに何度も何度も。

 私は私でいいの、他はいらないから。

「緋音先輩」

 明るい笑顔がこちらを向いている。

 なくしたものの置き土産。

 私はそこにいないの、どうか私を助けて。

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