第4話 キュウの秘密

 目を開くとすぐに、碧味を帯びたトパーズ色の髪が見えた。


 あぁ、キミの髪の色は明るいところで見るとこんなにも美しかったんだね。

 僕に合わせて暗闇にばかりいたキミ。


 ――もっと傍にきて、顔を見せて。

 ――もう、陽の光は平気だから。


「……シャ……クーラ……?」

「キュウ!!気がついたか!!」


 腰に手をあてたタマちゃんと、なぜか泣いているうっしーと……とにかく心配そうに僕を覗き込むみんなの顔。


 意識がハッキリしてやっと、ここが自分の部屋の、自分のベッドの上だとわかった。


「ふんもおぉぉ!!」

「……うっしーが運んでくれたのか。サンキュ」


 泣き笑いするうっしーの横で、フラちゃんも、ミィも微笑んだ。


「ヴァンパイアの貧血なんて洒落にもならないわね!」


 頭の回りをチラチラ飛び回るシルフが冷たくそう言い放つ。

 あ、ハニー達、シルフは初めてだよね?

 シルフはね……


「私はね!フランケンを作った博士につくられた機械仲間よ!身長50センチくらい!あとは勝手に想像して!」

「私の説明なんかいいから寝てろ、色ボケ!」


 ごめんね、ハニー達。

 シルフは短気でドSなんだ。


 そのシルフの後ろから、エリザベスカラーを手に現れたのは狼男のわびちゃん。


 エリザベスカラーを知ってるかい?

 怪我をした犬猫が首周りに着ける大きな円錐形のガード、あれだよ。


「……わびちゃん、大丈夫。どこも傷付いたりしてないよ。……というか舐めないし」


 そう言うと、わびちゃんは恥ずかしそうにエリザベスカラーを背中に隠した。


「……みんな、サンキュ、どうやら昨日吸い込んだ3人の精神spiritが良くなかったらしい」

「もう大丈夫だよ、仕込みしちゃわないとね」

「……ていうか今何時?」


 そう普段通りに話し、体を起こす。

 ちょうどその時、タマちゃんが興奮して言った。


「毎年、この日だから何かあるとは思っていたが……キュウ!!お前、姉さんと付き合ってたのか!!」


 やれやれ、どうやらむっちゃんに夢の中を覗かれたらしい……


「答えろ!キュウ!!」

「ちょ……ちょっと、王子!」


 むっちゃんの相棒のサトリ、サトちゃんが珍しく空気を読んで畳み掛けるタマちゃんを止めようとした。


「……サトちゃん、いいよ、サンキュ」


 いつも煩いくらいに賑やかなこの店のこいつらが、一瞬にして静かになった。


「彼女の名は、シャ・クーラ・ゴルディ・ハクナ・ランジェット」


「タマちゃんはまだ幼かったから何も知らないだろうけど……」


「亡くなった魔界の王女、シャ・クーラと僕は……」


「愛し合っていたんだ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る