IOT

 IOT、それは「インターネット・オブ・トイレ」の略である。トイレがインターネットに接続し、あらゆる情報を相互交換する、というものだ。

 日本国内ではある年に温水便座の普及率が85パーセントを超え、温水便座市場が頭打ちになったことから、新たに発売されたのがIOTなのである。

 IOTは大きく分けて3種類ある。一般家庭向けIOT、企業や店舗向けの個室一体型IOT、そして小便器用IOTだ。

 では、IOTは何が出来るのか。

 IOT化された一般的なトイレでは、まず便座に座ると、「尻紋しりもんセンサー」が作動し、インターネットを通じて世界中の尻紋情報へアクセス、個人を特定する。本人認証が完了すると、1日のトイレの回数や前回のトイレからの経過時間、使ったロールの回転数、トイレ在席時間、さらに位置情報による使用したトイレの場所までもが、スマートフォンと連携・表示されるのだ。

 また企業向けの個室一体型IOTでは個室の扉に有機ELモニタが設置されており、そこにマイトイレ情報が映し出される。

 商業施設では、有機ELモニタ向けに広告や健康コラム、ゲーム・動画コンテンツなども配信されている。

 ちなみに小便器の場合は、便器上部に指紋センサーがついており、使用前にそこに触れることでマイトイレ情報へアクセスできるようになっている。なお、センサー部は自動消毒機能付きである。

 便座には体組成計機能がついており、尻からの微弱な水分などからBMI、体脂肪率、内臓脂肪レベル、皮下脂肪率、基礎代謝量、体内水分率、体内年齢、推定骨量、そして尻圧けつあつが計測できる。

 もちろん体重は便座に座った時点で計測される。小便器の場合でも立ち位置部分に埋め込まれた体重計で計測可能だ。

 さらに検査キット・カートリッジが内蔵されているIOTでは、排泄物などから簡易的な検査が可能なのだ。検査項目は、尿糖、尿蛋白、尿潜血、尿沈渣にょうちんさ、尿比重、尿ウロビリノーゲン、便潜血などだ。ほとんどの項目が1分以内に検査結果が判明するが、時間を要する項目は、後にスマートフォンへ情報が送信される仕組みだ。

 これらの検査項目はすべてデジタル化され、健康状態を5段階で評価してくれる。なお、最低評価となった場合、インターネットを通じ、登録病院へ通知され、後日病院側から来院の案内が来るようになっているのだ。

 検査に掛る費用は、月額固定費用で、マイトイレサイトからクレジットカード、銀行振り込みなどで支払い可能だ。当然、保険適用である。


 実は今、IOTの普及率が急激に伸びているのだ。

 その背景には、便や尿の検査が日常的に出来るようになり、病気の早期発見に役立っているためである。

 国は検査機能付きのIOTを普及させるべく、トイレエコポイント施策を実施した。個人、法人に限らず全てのトイレをIOT化することで、検査費用を全額保険適用とし、実質無料にする施策だ。

 高齢化に伴い、病院での検診に時間が掛る中、自宅で簡単に健康チェックが出来ることから国主導で施策を進めている。


 IOTは一大ブームとなった。自宅のトイレはもちろん、商業施設、会社、学校や公園、公共施設までもIOT化され、いまやIOT化されていないトイレは「レトロイレ」と言われるまで過去のものとなった。

 その間、「カメラ内蔵IOT」という商品が発売され、プライバシーの関係上、問題となったり、マイトイレサイトの個人情報漏えい問題、IOTの設置工事を高額請求する「IOT詐欺」、IOTを不正に操作し、偽のマイトイレ情報に接続させたり、使用中、勝手にお尻洗浄機能を発動させたりする「IOT遠隔操作事件」などの問題も発生した。

 しかし、国のトイレエコポイント施策が後押しする形となり、初期のIOT登場から僅か4年で普及率75パーセントまでになった。

 水洗トイレ、温水便座、そしてIOT。普及率の高さから、これらは「三種の便器」と言われている。

 IOTはどこにいっても、自分の健康状態を簡単にチェック出来るなくてはならない存在だ。さらにトイレ扉の有機ELモニタには、その健康状態からおすすめの健康食品の広告配信、病院情報の案内の他、用を足す間の時間向けに、IOT限定の動画コンテンツなども登場した。

 より便利により健康的な世の中へと進化していった。


 ただひとつ、IOT化が進むころから深刻な現代病が増えた。IOTのデータによると、トイレ平均在席時間がIOTの普及率に比例するように伸びているのが分かっている。

 長時間トイレに座っていることによる病気、そうそれは痔だ。

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