第15話クエスト15 王家は今。

シリアス?何それ?あぁ牛乳かけて食べると美味しいやつですね。



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「はぁっ!」

キンッ

剣は中を舞い、地面に落ちる。


「ま、参りました。」


「よし、お疲れ。 では少し休憩をしよう。」



王城の訓練所では、第二王子レイクが日々、訓練に勤しんでいた。


「かぁ〜さすがですな、レイク様!これなら、我が国も安泰ですな。」

「いやぁ、正直、心配だったんだよな第1王子の時は。」

「ば、バカ!レイク様の前で・・「チャキッ」



「今、兄さんのことを口にしたのは誰だ?」

父親のグレイス譲りの整った顔で兵士を睨む。


「す、すいません。こいつはまだ軍に入ったばかりの新人です、言い聞かせるので、どうか、どうかご慈悲を!」


「・・・次は許さないぞ。」





王都から抜け出したメルの評判はすこぶる悪かった。ただ、逃げ出すのではなく弟との模擬戦に負けた後に逃げ出したので、軍や関係者たちには負けて逃げ出す憶病者とされ、悪口も日夜問わず囁かれていた。


それを真っ向から否定していたのはレイクである。いくら家臣でも兄の悪口は許さないぞと。



軍では、このことが気に入らないレイク様の前で、メルファリア王子悪口を言うと、レイク様が怒りだしなにをするかわからないということで、この話はタブーとなっていた。


「まぁまぁ、レイク様、そんなに気を張ってたら疲れますよー」


この軽い感じの男は、レイクの護衛隊長のヘドルトという。 隊長を任せられるだけの実力があり、魔族とも、一体一で良い勝負ができるだろう。さすがに、魔王軍の幹部達は無理であろうが。


「ヘドルト、お前は気を緩めすぎじゃないか? 」

「へへっ、いいんすよ、やる時はやりますって。」

「じゃあ一試合するか?」

「えぇ、レイク様まだやるんすか?さっき闘ってたじゃないすか、どんだけ訓練好きなんですか・・・」


「・・・・・まだ、まだ兄さんには足りないんだよ」

ボソっと本音をこぼしてしまった。


「はい?なんか言いました?」

(ほんとは聞こえてるっスけどね)


「いや、なんでもない。 皆!休憩は終わりだ。訓練に戻れ!」



「「「「「「「はいっ!」」」」」」


「(あちゃー、なんか拘ってるっぽいですねー、ほんっと、メル王子は、なにしてるんすかね。」


チャラくみえてレイクを一番心配してるのはヘドルトであった。



レイクが訓練に打ち込んで1日でも早く少しでも強くなろうとするのは実は模擬戦の後からである。


レイクは、実はこの模擬戦、メルが本気でなかったと考えている。

あの頃、大体1年かそれ以上前のことだった。

訓練の後、レイクは頼み込んでメルと、模擬戦をしていた。それもこっそり。

いつも勝てなくて、だだをこねてしまった。

一回くらい勝ちたいと。

それで少し日が経った後に、皆の前で模擬戦をする機会があった。もちろんレイクは全力で臨んだ。今日こそは勝つぞ、と。


「はじめっ!」

闘いの合図の後にまずは先手をレイクが取る。自分の方が格下なのは分かっていたので、自分が後手に回るわけにはいかない、先手を撃ち続けるのだ、と。

しかし、少し撃ち合いをして分かった。いつもよりも戦えている。兄さんに負けていないと。



そしてついに、メルの剣は手を離れ遠くに弾き飛ばされてしまった。剣を突きつけ、試合は終わりとなる。

おお、どよめきが家臣たちに走る。

初めて勝てた。そのことは家臣たちは知らないが、レイクとメルだけは分かっていた。

そして喜んだ。これで少しは兄さんに追いつける、と。

そして翌日、兄が失踪した。その時に真っ先に思ったのは昨日の模擬戦だった。

あれは兄さんがしがらみから解放されるための布石だったのではないか。こうなるためにわざと負けたのではないか。

僕の役目はなんなのか?




「そうか……兄さんに託された僕の役目は強くなり王位を継ぐことだ。」


そう、メルはそれを狙っていた。


「そして、王位を得て、兄さんの助けをすればいいんだ! それとも裏で兄さんが僕を操るのかな?」


そしてレイクは少しずれていた。



メルはしがらみから離れて自由になるどころか真綿でじわじわ締め上げられていた。





その日からレイクは、鍛錬に鍛錬を重ね、日夜体をいじめていた。 朝起き筋トレにランニングに素振り、昼に模擬戦や、魔法の稽古、夜にはまた素振りや出来る限りの事をした。



異常なまでに訓練をしてそして、



そして、周りからは密かにドMイケメンと名付けられていた。




「殿下やばいよ、目覚めちゃったらしいよ。」

「なになに?!新しい扉開いたの?」

「マジっすか、で、でも、俺は付いてくっす!」







「はぁ、兄様はまだでしょうか。懸賞金もかけましたし、早く来るといいです。」


実はこの指名手配書の、懸賞金をかけたのはノアステル第1王女こと、ノアである。

母に直訴してかなりの額を釣り上げた。

ただし、deadoraliveは父が付けたものであり後日大慌てして、母に泣きついた。そして母が、大暴れした。





「ノアステル様、何かご用件はなんでしょう。」

ひとりのメイドが、部屋に入って来る。まるでそこにずっといたかのように物音を立てずに現れた。

「あれ、持ってきた?」

「はい、ここに、」

がちゃんと、音を鳴らし、ソレを地面に置く。手錠や、足枷など、王女に似つかわしくないものばかりである

「ん、それで、兄様の動向は?」

「動向が途切れたところを中心に聞き込みをしたところ、変装をして、デイズへ向かったのかと。」

「分かったわ。いつもありがとう、ロザリア引き続き捜索と聞き込みを、デイズ中心でお願いね。」

「はっ。ありがたき幸せ。お任せください」


そして闇に消える。ロザリアは城の隠密部隊でありその部隊長である。なぜノアに従うかというと


ノアは白髪で、着る服も白い服が多く、幻想的な見た目をしていた。人が見れば妖精か女神かと見間違えるほどだった。そのため可愛いものに弱い女性の人気を得ていた。もちろん男性の人気もあるが、女性陣が近寄らせてくれない。

メイドや女騎士、隠密部隊を集めて戦乙女の会というものが密かに結成されていた。


「兄様には、女性が近寄らない魔法をかけてあるので安心です。ふふっ。あぁ、早く帰ってこないかなぁ。」

ノアは、兄に魔法をかけ女性が近寄らないようにしていた。 兄が世界で一番かっこいいと思っているので、一定の魔力を持つ女性以外からは魅力が全く無いように見える魔法を作りだし、かけておいた。この時ほど過去の自分ナイスと思ったことはなかった。


そしてノアはブラコンでヤンデレであった。次帰ってきたら、二度と離さないつもりでいる。兄が失踪するまでは普通の家族が好きな末っ子だったのだが、愛が歪んでしまった。

そうなったら戻らない。


そう、メルは妹のケアについて、忘れてしまっていた。妹の実力については知っていたのに。



よって、真綿どころか、鉄鎖で締められていくメルであった。





所変わって、互いに一仕事終えた、

女だらけの花園ノアステル派と、むさ苦しい、強さを誇るレイク派。


この二つが城内の主勢力となり、分かれていた。

どちらもどちらを牽制し合い、ノアステル様が良い、レイク王子が、一番と、言い争い仲は悪くなっていた。と言っても非公式なので、表向きは普通だが。


その派閥の頭は、それはもう犬猿の仲であった。



「おいおい、ラザニアさんよー、うちの王子に近づかないでくれますー?軟弱なのがうつっちまうんすよー、」


「はい?ヘドロ野郎が何を喚いているのですか? 臭いです、即消え去りなさい。」


「ああ?誰がヘドロっすか?ヘドルトだ!

この、ブスが!」

ちなみに、ロザリアは超絶美女である。

戦乙女の会はノアの美しさを損なわない程度の容姿が入会条件であるのだ。会頭の彼女がブスでは成り立たない。



「それをいうなら、 私の名前はロザリアです。脳まで筋肉なのですか?この低脳が」

ちなみに、ヘドルトは頭がいい。名門の騎士学校主席で、軍の指揮も取る。


「ああん?」「は?」


一触即発である。そこへ、問題の主人たちが現れた。


「どうなさったのですか?この騒ぎは。」

「どうしたんだい?君達。」


「あ、ノア」「レイク様」


サッと争いをやめ隊列を組み道を開ける。

まるで何事もなかったかのように笑顔を浮かべ、二人を迎える。


「いえ、これからの訓練に隠密部隊も参加しないかと思いまして、話をしてたっす。」

「っ、ヘドルト、敬語を使いなさい。そうなのです。少し模擬戦でもいたそうかと、話し合いをしていました。」


「あぁ、ヘドルトのことは気にしなくていいよ、そうか、それなら僕も呼んでくれよ、ぜひ、お手合わせ願いたい。」


「(どうっすか、うちの王子の寛大さ、器のデカさ!)」

こっそりロザリアに話す。

レイクは爽やかスマイルをロザリアに向け、ロザリアは心を持っていかれそうになったが、ノアに忠誠(仮)を誓っているのでなんとか耐えた。

後ろではメイドたちが鼻血を出し倒れるものが出ていた。


「鍛錬も良いですが…怪我をなさらないようにしてくださいね、皆さん。」

「(貴様らのようなグズどもも心配してくださるうちの天使はどうだ?)」

仕返しとばかりにほくそ笑む。人間から天使にジョブチェンジしてるが。

ノアはニコッと騎士団に笑いかけ、騎士団は壊滅状態ながらなんとか持ちこたえた。ぐふっと血を吐くものもいたけれど。

ヘドルトはなんとも無いように立っているが、意識が飛んでいた。少しして自我を取り戻したが。



「ノア、少し話したいことがあるんだが、君の部屋にでも行っていいかい?」

「奇遇ですね、少し私もお話が。」


ノア派も、レイク派も、心の中で絶叫していた。しかしお似合いなのも事実、心の中で血の涙を流していた。


そして互いに睨み合い、どうしてくれんだこら!と怒りの表情を送りあっていた。





しかし残念ながらこの二人が好きなのは、家臣たちが眼中にないメルであった。









「さてあなた、どうしてくれるのかしら?」

「え、いや、そのー、儂はじゃな、」

「なんでdeadがついているのかしら?」

「い、いや、それはメルの強さを見込んでじゃ!お前はメルを信じていないのか!」

「声を荒げて、話を逸らそうとしても無駄ですよ?どうやら言い逃れはできないようですし、 やりますね?」


「まぁ、待て、そうはやまるな。武力とは最終手段ではなくてはいかん。」

「あら、そういうあなた先日、魔王軍との停戦交渉場所を間違えて、吹き飛ばしていたじゃないですか。何処に武力以外のものがあるのですか?」


「それはそれはこれはこれ「ブリザード」

ギィヤァァァア!ちょっと待って!そんな大魔法城の中でつかっちゃ「フレア」ァァァァ暑いっ!今度熱いって!」




こうして、王の間付近は三日三晩立ち入り禁止となった。




====閑話======


ノア「母様、好きな人が出来たらどうすればいいのでしょうか?」

フラム「んーそうねぇ、それじゃあ、好きな人を取られないように特別な魔法を作りましょうか。」


ノア「はいっ!」


後日


ノア「ハートバインド!」

メル「うぉっ、なんだ?どうしたノア」


ノア「えへへおまじないです兄様。」

メル「そうかありがとうなー。」





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