第2章 蠢く者達
第12話 クエスト12王とその家族
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「王都中に、指名手配しろ!今すぐにだ!見つけたものには1000万レム、有用な情報には100万レム払うと伝えろ!」
男は叫び、膝をついて頭を垂れた者達が返事をする。
「「「「「「「はっ!!!」」」」」」」
ガシャガシャと騎士達が鎧を鳴らし去っていった。
あたりがシーンとしだした頃、男は独り言を呟く。
「あの馬鹿め、ワシの力を見くびっておるな。やる時はやる男それがわしじゃ。思い知らせてくれよう。ふふふ、ふはははははは!」
男の居城には、高らかに笑う声が響いていた。少し誤算はあったが、自分を出し抜くことなどできないと思っているのである。
「さて、儂もこれ以上この場にいてはおられん。妻よ、留守は頼んだぞ。」
「はい、あなた。お気をつけて。ふふふ、大丈夫ですよ、あの子も私たちの子なんです、きっと元気にしてますよ。」
男の横には妻と思しき女性が寄り添っていた。2人は心が読めるかのように、目配せをし、妻は男を見送る。
「あなたも歳をとったのですから無茶をしないようにね?」
「ふん。若造どもには負けんわい。まだまだ現役、儂の恐ろしさをみせちゃるわい。ふははは 「あなた?」 は、はい!」
いつの世も男性は女性には敵わないのである。これは世の理か、真理だろうか。
そしてこの男は、魔王軍との戦いに明け暮れる王、グレイス・ベオルブであり、始まりの町デイズを始め多くの町を治める、オーラル国の国王である。
この国では階級や、位が高いほど、力を持つものが多い。文官のみの者などもいるがほとんが武力を持つ者達が、政治を、国を動かしている。
それも、この世界だからかもしれない。多くの魔物がおり、人類には天敵もいる。力を持たない一般民では、勝てないどころか、勝負にもならない。
貴族や将軍達は、金を徴収する代わり、民を守る盾となり、矛となる義務を負う。
王ともなればその国最強と言っても過言ではない。 伝承では、初代国王は勇者だったという。
数週間後。
「王のご帰還だ!門を開けろ!隊列を整え、出迎えるのだ!」
「グレイス陛下が帰還なさったぞー!」
兵団に囲まれた王が帰還した。
「うむ、皆の者今帰った。」
「父上!」「父様!」
王と呼ばれたもののところへ走って近寄る二つの影があった。
「おぉ、よしよし。レイクとノアではないか・・
元気にしておったか?」
「「はい!」」
「お父様!私魔法が使えるようになりました!」
「父上、後で剣の稽古をお願いします。」
「お母様もまってます!」
「今日の夕食は子羊のシチューですよ!」
2人は甘えるように次々と話しかける。
「おぉわかったわかった、してあやつはどうか?帰ってきたかの?」
すると急に2人とも元気がなくなる。
グレイスも困ったような表情をし、執事を呼ぶ。
「おい、何か、情報は入ってないのか?」
グレイスの持つ、燃ゆるような赤髪が炎のようにゆれ、その眼光は魔物をも射止める。敵意は向けられてないにしても、覇気をだされ、睨まれたら誰でもすくんでしまうだろう。
「も、も申し訳ありませんんん、詳しい情報は入ってませんんが、少しきになる情報が、」
執事は震えながらもどうにか答えた。
周りのものは執事に同情しながらも、よく答えた、と賞賛していた。ただし心の中で。
この王に仕えるものは皆知っている。身内にだだ甘なのだ。特に妻や、子供への愛情がひとしお強い。むしろ強すぎるくらいに。
もし子供や妻に危害を加えられたら、7日7晩暴れまわるだろう。国最強の男が、だ。迷惑極まりない。
「なんだ?その情報は」
ようやく少し空気が和らいだ。王家に仕える執事は一流。素早く心を落ち着けた。
「黒髪の子供が馬車で王都の外に出て行ったようです。幸い魔族のいる方面ではなく、遠くへ行くほど危険度が下がる、始まりの町デイズ方面へ向かったそうです。」
「おお、そうかそうか、ならば危険は少ないな。うむ良かった良かった。」
「しかし、いかんせん町が多いですから、いっそのこと国全土にこのことを知らせては?勇者の血を引く黒髪はそう多くはないですし。」
そう、黒髪は勇者の子孫と言われており数もものすごーく少ない。その証に黒髪の子の兄弟は金髪と白髪なのだから。父は赤髪、母は複数いるが、必ずしも親の髪の色が反映するわけではないようだ。
しかし、黒髪は初代国王の時代は国王しかいなかったようだ。しかし英雄色を好むとはよく言ったもので、勇者の子の証、黒髪の子は今ではたまーにスラムや、一般人にもいるが。
「うぅむ、少し心配だがなんとかなるだろう。よし、では指名手配を全土に配布せよ、情報も網を張り逐一報告しろ。」
「はっ、かしこまりました。」
「うむ、お前は優秀だからな。期待している」
「お任せを、必ずや、メルファリア様をお見つけいたします。」
こうして静かにメル捕獲作戦は始動していく。
「あらあら、どうしたの2人とも、そんなしょぼくれて。」
「フラム母様ーーー!」 「母上!」
今にも泣き出しそうな2人をフラムは抱きしめて慰めてあげる。
「兄様が・・・帰ってこない・・ぐすっ。」
「兄上はどうして出て行ったのですか?」
「あら〜そんなこと考えてたのね」
と苦笑するフラム。
「ほら、メルファリアのことよ、いつかひょいって帰ってくるわ。あなた達の自慢のお兄ちゃんでしょう?」
「「・・うん、うん!」」
「あら元気になって、偉いわねぇ2人とも。さぁ、もうすぐ夕食ですよ。手を洗いに行きましょう。」
2人とも、フラムの手を握り一緒に歩いて行った。
ちなみに、ノアステルは違う女性の子だが、ノアを生んだ時に死んでしまった。そのことを気にかけたフラムが、幼いノアを引き取って育てた。そして、今では本当の家族になっていた。
「(ふふふ、あの子にはちゃーんと教育しなおさなきゃいけないわね、部屋に鍵と結界を掛けないと。)」
フラムは子供を撫でながらそう思った。
こちらはこちらで愛の重い親であった。
====閑話===
レイク 「なぁ、ノア、寂しかったら僕のことお兄様って「嫌です!」
ノア「レイク様は、鍛錬のお時間では?早く行ったらレイク様。 邪魔よ、レイク様」
レイク「(意地でも呼ばないか・・・なんか様付だと距離感じるなぁ、こんな時兄様なら・・・そうだっ!) ・・・・さぁ、泣かなくてもいいんだ、僕の胸へ飛び込んでおいで!」
ちなみに飛んできたのはファイヤボールと、より下がった評価と毒舌だけだった。
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