思い出屋さんのゆううつ

咲川音

思い出屋さんのゆううつ

 とある小さな村のはずれ、小高い丘のてっぺんに古いお家がありました。


 木の扉には剥がれかけた貼り紙が風にパタパタはためいています。

『思い出屋 いつでもどうぞ 番号は123―321』


 中にはヨモギさんというおばあさんが一人、暇そうにぽつんと座っていました。


 お店といっても、部屋にはなんにもありません。そもそも、こんな所にわざわざ買い物に来るお客さんなんていないのです。今も聞こえてくるのは葉っぱが揺れる音ばかり。


 じゃあ思い出屋って何を売っているのでしょう? 実はこのヨモギさん、一つだけとっておきの秘密があるのです。それは……


 ジリリリリン ジリリリリン


 ヨモギさんの目の前にある赤い電話が鳴り始めました。


「はい、もしもし」


「もしもし、思い出屋さんですか」


 女の子の声です。ヨモギさんはしわがれた細い声でそうですよと答えました。


「あのね、ちいちゃんにパパの思い出の声を売ってほしいの」


 ヨモギさんは女の子の言葉にうんうんと頷いて、ごほんと一つ咳払いをしました。そして……


「もしもしちいちゃん、元気にしているかい」


 突然、ヨモギさんの声が変わったのです。さっきまでとは全然違う、おなかの底に響くような男の人の声でした。


「パパ!」


 女の子が嬉しそうに叫びます。


「ちいちゃん、ちゃんとママのいうことを聞いていい子にしているかな?」


「うん、パパ。今日もね、お皿洗い、ちいちゃんがお手伝いしたんだよ」


「そうかそうか、ちいちゃんは偉いなあ」


 そう、実はこのヨモギさん、『誰かの思い出の人の声をまねすることができる』という特別な魔法を持っているのでした。


「あのね、ちいちゃんパパが天国に行っちゃって寂しいよ。ちいちゃん、パパに会いたいよ」


「パパもちいちゃんに会いたいなあ。でもね、パパはいつだってちいちゃんのことを見守っているからね。だから寂しく思わなくてもいいんだよ」


 こうやってお話をして、誰かの思い出の声を売るのが思い出屋さんのお仕事なのです。


 ヨモギさんには色々な人から電話がかかってきます。


 喧嘩したまま死んでしまった親友に謝りたいという男の人。お母さんに結婚の報告をする女の人。たまに「死んでしまったペットの声を聞きたい」なんて言う人もいて、そんな時ヨモギさんはひどく苦労するのです。


 電話してきた人たちはみんな思い思いに泣いて笑って、それから最後は必ず「ありがとう、ありがとう」とお礼を言いながら会話を終えるのでした。





 女の子からの電話を終える頃には、部屋中を染めるセピアがうっすらと翳りを帯び始めていました。そろそろ夕ご飯の時間です。


 ヨモギさんはよいしょと椅子から立ち上がると、戸棚からパンとチーズとミルクを取り出して部屋を後にしました。


 お家の裏、小さな花が点々と咲く草むらにまあるい石のお墓があります。


「おじいさん」


 ヨモギさんは呼びかけて、ちょこんとその前に座りました。


 ここにはずっと昔に死んでしまった、ヨモギさんの旦那さんが眠っているのです。


「今日もたくさんの電話がありましたよ。最後の女の子、喜んでくれたみたいでよかったわ」


 お店が一段落した後、ここで夕ご飯を食べながらその日一日の出来事を話すのがヨモギさんの日課でした。


「お昼にね、フルーツとお花がたくさん届いたの。前に話したお客さんからよ。ありがとうってお手紙もついていたわ」


 ヨモギさんはぽつぽつと言葉を落とします。


「みんな、ちゃんとわかっているのね。死んでしまった人じゃなくて、私が話しているんだって。……それはそうよね。それでも、やっぱり声が聞きたいんだわ。伝えたいことがあるんだわ」


 たとえ自己満足だとしてもね、と優しく石を撫でます。


「ねえおじいさん、知ってるかしら。人はね、死んでしまった人の声から先に忘れていくんですって。だからみんな、私に電話するんだわ。でもなんだかそれって、とても悲しいことじゃない?」


 ヨモギさんに答えるように、サワサワと草木が音を立てます。


「おじいさん、私もおじいさんの声が聞きたいわ。話したいことがたくさんあるのよ」


 ヨモギさんの目から、ぽつりと涙がこぼれました。


「おじいさんの声、もう思い出せないの……」


 ヨモギさんには悩みがありました。他の人の声は出せるのに、大好きなおじいさんの声だけ、どうしても思い出すことができないのです。


 ヨモギさんはいつも一人、寂しい思いをしていました。





 そんな毎日を過ごしていた、ある日のことです。


 トントントン


 木の扉をノックする音が聞こえてきます。


「あらあら、お届け物かしら」


 いつもの通り、電話の前で頬杖をついていたヨモギさんは、どっこいしょと立ち上がってドアを開けました。


「こんにちは」


 そこにいたのは小さな男の子でした。思いがけない訪問者に、ヨモギさんの目がまんまるになります。


「まあまあ、かわいいお客さんだこと。何かご用事?」


「うん。僕のママがね、おばあちゃんにこれを持っていきなさいって。この前はお世話になりましたって」


 男の子はそう言って手に持っていた箱を渡します。蓋を開けると、おいしそうなケーキが入っていました。


「まあ嬉しいこと。ありがとう坊や、外は冷えたでしょう。中に入って温かいお茶でも飲んでいきなさいな」


 普段郵便屋さんくらいしかこないお家です。ヨモギさんはすっかり嬉しくなってしまって、はしゃいだ声をあげました。


 それからヨモギさんは男の子を椅子に座らせると、ハーブのいい香りがするお茶と、りんごのジャムがのったクッキー、そして男の子が持ってきてくれたケーキを綺麗に盛り付けてテーブルに並べました。


「楽しいわ。誰かとお食事をするのなんて、何年ぶりでしょ」


「おばあちゃん、一人で暮らしているの?」


「そうよ。昔はね、おじいさんと二人だったのだけど」


 二人はお茶を飲み飲み話します。


「このケーキとっても美味しいわ。坊やのママ、お料理上手ねえ」


「そうだよ。でも今日のケーキは特別なんだって。ほら、フルーツがたくさんのっかってるでしょ。ママがね、僕のおばあちゃんとお電話させてもらったからそのお礼にって」


 あら、じゃあ少し前のあのお客さんかしら、などとヨモギさんは考えます。


「ママ、とっても喜んでたよ。でも僕よくわからないな。僕のおばあちゃんは、僕が生まれる前に死んじゃったから、声を聞きたいとは思わないんだ」


「それは坊やがまだ小さいからよ。もっと大人になったら……ううん、もしかしたら大人になる前なのかもしれないけれど……とにかく、嫌でも私に電話をかけたくなる時が来るわ」


 でもその頃には私はいないかしらね、とヨモギさんは笑います。


「嫌でも? それって、嫌なことなの?」


「だって、とても寂しいことじゃない。もうその人には二度と会えなくて、私のニセモノの声でしかお話しできないなんて」


 ヨモギさんは電話の後に感じる気持ちをそのまんま返しました。


 男の子はよくわからないぞ、という顔で首をかしげたままでしたが、やがてうんと頷いてヨモギさんを見つめました。


「おばあちゃん、寂しいんだね。そうだよね、こんなところに一人ぼっちなんだもの。ねえ、僕明日からここに遊びに来てあげるね。そうしたら、もう大丈夫でしょう?」


「まあまあ、ありがとう。でもここには遊ぶものがないし、きっと退屈しちゃうわよ」


 そんなことをいいながら、ヨモギさんは顔中のシワを寄せてクシャッとした笑顔になっています。


「大丈夫だよ、僕おもちゃたくさん持ってくるから」


 男の子は得意げにふんぞり返ってそう宣言しました。





 約束通り、次の日から男の子はヨモギさんのお家に遊びに来るようになりました。


 おひさまがお家の真上に昇る頃、たくさんのおもちゃを詰めたリュックサックを背負ってやってくる男の子に、ヨモギさんの生活も変わります。


 まず、お昼ご飯の時間までうとうとと長椅子に座っていたヨモギさんが、朝早く起きるようになりました。男の子におやつを作るためです。


 冷たい井戸水で顔を洗って、とっておきのお洋服に身を包んだヨモギさんは、えっほえっほと丘を下りて村に向かいます。今までお客さんから届くお礼の食材だけでご飯を済ませていたものですから、なにぶん材料がないのです。


 はちみつ、バター、生クリームにチョコレート。お店の人とおしゃべりなんかして、全てがそろう頃にはもうお昼近く。


 今度はえっほえっほと丘を登って、ドーナツやらクッキーやらが出来上がる頃、トントントンと木の扉をノックする音が聞こえてくるのでした。


 男の子とヨモギさんはお家で気ままに過ごします。おやつを食べながらおしゃべりしたり、持ってきたおもちゃで一緒に遊んだり。


 もちろん、お仕事もちゃんとやっていますよ。ただ、絵本を読み聞かせているときにジリリリリン、なんて鳴り出すとヨモギさんはいかにもしぶしぶといった様子で「もしもし」と電話をとるのでした。


 ヨモギさんがお仕事をしている間、男の子はその向かいに腰かけて興味津々に見つめています。


 しわしわの口から飛び出す、鈴の音のように澄んだ声やガラガラのしわがれ声……目の前でころころと変わる虹色に、男の子は目をキラキラさせてヨモギさんに飛びついてきました。


「すごい、すごおい! おばあちゃん、魔法使いさんなの?」


「そんなたいそうなものじゃないわよ。ちょっと声まねをして、お客さんの気を紛らわせてあげているだけ」


 そう言っても男の子は、足をバタバタさせて「もっかい、もっかい!」とせがみます。さっき出した声を一通り繰り返してあげると、男の子はキャッキャッとはしゃいで言いました。


「でもいいねぇ、おばあちゃん。お電話しなくても、いつでもお話しできるんだもんねぇ」


 ヨモギさんは寂しそうに首を横に振ります。


「ううん。おばあちゃんね、一番聞きたい人の声だけ忘れちゃったの。だからもう、おしゃべりできないのよ。変ねぇ。一度も聞いたことない人の声は出せるのにね」


「忘れちゃったの?」


「ええ。ただ……あたたかい、おひさまみたいな声だったことだけは覚えているわ」


「ふぅん……そうだよねぇ。自分とはおしゃべり、できないもんねぇ」


 男の子の分かっているのか分かっていないのかよくわからない呟きに、ヨモギさんは思わず声を立てて笑ってしまいました。





「ばあさん、来週の花祭り、あんたも参加するのかい?」


 パン屋の主人からそう声をかけられたのは、買い物先の店主たちともだいぶ顔なじみになってきた頃のことでした。


「花祭り?」


「あら、おばあちゃん知らないの? 毎年この時期になると、春の訪れを祝って村をあげてお祭りをするのよ」


 横にいたお客さんもニコニコとそう言います。


 おじいさんがいなくなってから村に下りてくることもなくなっていたヨモギさんは、村の行事についてからっきしなのです。


「でもいいのかねぇ、こんな年寄りが参加しちゃって」


「なーに言ってるの、みんなのためのお祭りなんだから。出店もたくさんあるし楽しいわよ。気晴らしに来てみなさいよ」


 出店、と聞いてヨモギさんの頭にぽっと一つの笑顔が浮かびました。


「坊やが、喜ぶかしらねぇ……」


「坊や? ばあさん、孫がいるのかい?」


「いいえ、最近よく遊びに来てくれる男の子なの。でも、なんだか本当に孫ができたみたいでねぇ」


 ヨモギさんはふにゃりと顔をほころばせます。


「いいことじゃないか。じゃあその子も一緒に連れといでよ。その時にはうちの出店にも寄っとくれ。お安くしとくからさ」


 パン屋の主人はそう言ってにかっと笑顔を見せました。





 そして、花祭りの当日――


 その日は春を祝うのにふさわしく、気持ちのいいお天気でした。


 雲一つない青空に、色とりどりの紙吹雪が舞っています。石畳にはどこまでも出店が立ち並び、その間を縫うように音楽隊が愉快なマーチを吹き鳴らしながら進みます。


 うららかな光に包まれた、それは忘れていた胸のときめきをヨモギさんに運んできたのでした。


「ねえねえおばあちゃん、早く行こうよぉ」


 同じく横でわくわくと目を輝かせていた男の子は、もう待ちきれないというように繋がれた手を引っ張ります。


 ヨモギさんは男の子に連れられるまま、ざわめきの中に飛び込んでいきました。


 ホットドッグ、ジュースにお菓子、さらに髪飾りや可愛らしい小物まで、出店には何でも揃っていました。


「さあ坊や、何でも好きなもの買ってあげるからね。どれがいい?」


「うんとねえ、僕あれが食べたい」


 男の子が指さしたのは綿菓子屋です。店先ではおじさんが器用に棒を動かして、ふわっふわっと雲をかき集めています。


「すみません、綿菓子を一つ」


「はいよ、いらっしゃい。よかったなあボウズ、おばあちゃんと一緒かい」


 銀貨を受け取ったおじさんが男の子に笑いかけます。


「うん、そうなの」


 男の子が頷くのを見て、ヨモギさんは胸の奥が温かくなるのを感じました。





 出来上がった綿菓子に顔をうずめるようにして食べる男の子の姿を、ヨモギさんは目を細めて眺めます。


「美味しいかい?」


「うん。おばあちゃんも一口どうぞ」


 ヨモギさんはびっくりして男の子を見つめました。おじいさんが生きていた頃、美味しいものを食べる度にこうやって「一口どうぞ」と差し出してくれていたのです。


 男の子の笑顔が、あの時のおじいさんに重なります。


「ありがとう」


 ヨモギさんはちょっと屈んで、一口ぽふんと口に入れました。


 どこか懐かしい甘さがふわりと舌の上で消えていきます。


 こんなに柔らかな気持ちでおじいさんを思い出すのなんて久しぶりね、と男の子の頭を撫でながら思うのでした。





 それから出店をいろいろのぞいたり、大道芸人のショーやマジックを見たりしているうちに、あたりはすっかり夕方になっていました。


 眩いほどのオレンジの中、二人は村の中心にある広場へ向かいます。


 そこにはたくさんの村人たちが、みな思い思いにダンスやおしゃべりを楽しんでいました。


 歩き疲れたヨモギさんは近くのベンチに腰掛けます。男の子はしばらくヨモギさんの脚を心配していましたが、遊んでおいでと言う笑顔を見て、にぎやかな輪の中に飛び込んで行きました。


「やあばあさん、来てたのかい」


 顔を上げるとそこにはパン屋の店主が立っていました。


「ええ、おかげさまで……楽しい一日だったわ」


 店主はヨモギさんの隣に腰掛けると、ほれ、と手にした袋を差し出しました。


「楽しすぎてうちに来るのを忘れてたみたいだな。ほら、あんたと坊やの分だ」


 ほわりとバターの香ばしい香りが漂います。お代は、と言うといいからいいからと大きな手を振ります。


「それよりほら、食べてみてくれよ。うちの新作なんだ」


 こんがりときつね色のパンに、砂糖でできたピンク色の薔薇の飾りが乗っかっています。


 一口かじると、中からバニラが香るカスタードが飛び出してきました。


 思わず「美味しい」と呟いた時、後ろから声がかかります。


「あのう、思い出屋さんですか?」


 小さな女の子でした。その後ろには、若い男の人に子供を抱いた女の人……見知らぬ人がたくさんいます。


「この前お電話したちいちゃんだよ。おばあちゃん、あの時はありがとう」


 僕は親友と、私は母と。他の人もそれに続きます。


 そう、ここにいるのはヨモギさんが思い出を売ったお客さん達だったのです。


「ずっと後悔と悲しさでいっぱいだったけど、おかげで少し笑顔になれました。ありがとう」


 男の人の握手に、ヨモギさんはあっけにとられた顔で応じます。


 全員との握手を終えると、みんなキラキラした笑顔を残して、人混みの中に消えていきました。


 ヨモギさんはしばらくその方向をじっと見つめていましたが、やがてぽつりと呟きました。


「もっと悲しんでるのかと思っていたわ。死んだ人たちだけを想って。私のニセモノの声に何の意味があるのかと……」


 祭りの灯りを映す瞳に、涙が浮かびます。


「でも、違うのね。皆、前を向いて生きているんだわ。悲しいだけじゃないんだわ」


「そりゃ誰だって何かしら抱えてるものさ。たまに後ろを向いて動けない時もある。けど、あんたの売った思い出が背中を押してくれるのさ。皆そうやって生きていくんだ」


 俺みたいにね、と店主は微笑みます。


「声で分からなかったか? 俺は昔、娘を事故で失ったんだ。もうあの時は何もかも捨てて死んでしまいたかったね。でも今、こうやって毎日うまいパンを作るくらいには元気になった……前にしつこいくらい電話をかけてきた客がいたろう? あれは俺なんだ」


 ヨモギさんの頬を一筋、光が流れました。


「私の声はお役に立てたかしら」


「ばあさんにとっての坊やみたいなものだよ、あんたの声は」


 打ちあがる花火に、楽しそうな歓声が続きます。にぎやかな音楽と笑い声は、暮れていく藍色の空にいつまでもいつまでも響いていました。





 花祭りの翌日。お昼を過ぎても男の子はやってきません。


 風邪でも引いたのかしらとソワソワしていると、目の前の電話が鳴りだしました。


「もしもし、思い出屋です」


「もしもし、あー、エホン」


 高い声を無理やり低くしたような電話の相手に、ヨモギさんは首をかしげます。


「あー、僕はねえ、えーと、おじいさんです」


 舌足らずな口調にピンときたヨモギさんは、吹き出しそうになる口を慌てておさえました。


 男の子です。男の子がおじいさんの声まねをしているのです。


「おじいさんがいなくて寂しいみたいだけど、僕がいっぱい遊んであげるから大丈夫だよ」


 ヨモギさんは笑いながら涙をぬぐいました。


 電話の声はおじいさんと似ても似つきません。


 でもそれは確かにおじいさんからの電話でした。


 ヨモギさんはやっと、大切な人とお話しすることができたのです。


「ありがとうおじいさん。声が聞けて嬉しいわ。話したいことがたくさんあるのよ」


「うんうん、何でも話していいよ」


「そうね、何から話せばいいか迷っちゃうけど、まず。今日は坊やがまだ来ないのよ。たくさんお菓子も用意したのに、寂しいわ」


 電話の向こうでバタバタ、と音がします。


「今から、今すぐ行くから、待ってて!」


 ガチャンと切れた電話に、ヨモギさんはふふふと微笑みます。


「さて……」


 ヨモギさんは立ち上がると扉を開けました。外はもうすっかり春です。


「この貼り紙も、もっと立派なものにしなくっちゃね」


 にっこりと笑うヨモギさんに答えるように、木々がサワサワと揺れていました。

(おしまい)

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