史上最強の英語教室

ちびまるフォイ

受験でだけ使えるムテキの英語

「英語なんてわかるかぁ!!」


中学からはじまった英語だが俺の成績は絶望的だった。

あんなの暗号解読文よりも難しい。

知らない単語が多すぎてまったく内容がわからない。


「大丈夫、文脈や前後で判断すれば読めるよ」


「知らない単語が8割占めてるんだよぉぉぉ!!!」


成績が悪すぎたのもあって両親によって強引に英会話教室へと通わされた。

しかも学校の成績を必ずあげられると評判の教室。


「みなさん!! MGC英会話へようこそ!!

 ここでは日常会話で使えないが、成績を爆上げする勉強をします!」


「え……」


どういうことか意味はわからないが、成績が上がれば会話も問題ないだろ。


「では、授業をはじめます!! 外に出ましょう!」


「外ぉ!?」


外に出ると英語の教科書を持たされた。


「教科書に書かれている英文を読んでください」


「This is a pen!」


簡単な文章を読んだ瞬間、空間が曲がってペンが飛んでいった。

飛んだペンは向こうの大木に突き刺ささった。


「な、なんだぁ!?」


「ふふふ、驚きましたか。ここでは英語を呪文にできるんですよ」


「なんでそんな……」


「楽しくないですか?」


はっとした。

たしかにめっちゃ楽しい。

次の英文でどんな魔法が出るのか試したくて仕方ない。


「Good morning Ms.Green!!」


空気の刃がはしり、生い茂った雑草を刈り取った。


「Are you from America!?」


地中から銃弾の雨が空に向かって撃ちあげられる。


「なにこれ楽しぃぃぃ!!!」


すっかり俺は英語の魅力に取りつかれた。

英語は呪文となり、唱えることで魔法がさくれつする。


ただし、ちゃんと意味と使い方がわかっていないと効果は出ない。

単に英文を読むだけではダメなのだ。


「長文であればあるほど、大きな魔法を唱えることができますよ」


「本当ですか!! ぜったい唱えてみせます!!」


それからというもの、俺は見違えるように英語を勉強した。

あんなに嫌だった英単語を覚える作業も、いまでは楽しくて仕方がない。

ひとつ覚えるごとに自分の可能性が広がっていくのがわかる。


「それでは英語のテストをはじめます。試験開始!」



カリカリカリカリ……。



英語教室での勉強のかいあって点数は満点。

苦手教科だった英語は得意教科へと変わった。


「すごいよ、俺君。それだけ英語ができるなら

 インターナショナル学校に通うべきだよ」


「インターナショナル学校って、あの超難関の!?」


「君ならできる。間違いないよ」


「やってみます!!」


英語が得意な学校に入れば、ますます磨きがかかることだろう。

ということで、英語教室の先生に相談したところ即否定された。


「どういうことですか!? 受験できないって!?」


「あそこの受験項目は見たんですか? この教室で学んだ君には無理です」


「無理じゃない! 俺の成績なら合格できるはず!!」


先生の反対を押し切って、俺は受験に臨んだ。

どれほど難しいテストかと覚悟していたが、

魔法を極めた俺の前にはたいした難しさではなかった。


「ははは! 行ける!! これは合格できる! もう英語でわからないことはない!」


完璧な回答で提出できた。自信しかない。

やっぱり俺には無理なんかじゃなかった。


そして、最後の受験項目で英語面接が始まった。


「それでは、これから英語でスピーチしてください」


「はい、まかせてください」


英語を知り尽くし、テストでもいい点を取れている俺に敵はない。

どんなことだって話せる。頭には英文があふれている。


さぁ、いこう。



「This is a pen!!」



声に出した瞬間、面接官の眉間に魔法で飛んでいったペンが突き刺さった。

テストでいい点取れても会話ができない理由がわかった。

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