第27話 はじめの一歩
以上、回想終わり。
俺は深い深いため息をついた。
「どうしたの?」
「どうしたもこうしたもねぇよ」
自分の席から教室を一瞥する。
「結局、今までと何にも変わらねぇじゃねぇか」
「そんなこと、ないと思うよ。少なくともボクはそうだね」
「お前がグラウンド・ゼロだったろうが」
「何それひっどーい。もう少し平穏な言い方ないのー?」
桜川は頬を膨らませ、すねたような顔をした。
自分たちのクラスメイトにして、学校の生徒を束ねる会長。
それがまさか女装男子だったなどと、誰が思うだろうか。
「何にも変わってないんじゃ、ないんだよ。色々なことが変わっても、日常が変わらないだけだよ。何があっても、必ずここに戻ってくる。ボクはそう思うかな」
何だか深いような、当たり前のような。
「ねぇ、カイト君」
「どうした?」
振り向きざまに、桜川が飛びついてきた。
首根っこをちょうど腕で締められる形になり、息が苦しくなる。
顔は……胸に当たっている。
そして香るのは、女と見紛うレベルのやや甘い匂い。
「ありがとう、これからもよろしくね!」
「だったらもう少し穏当なやり方で謝意を表明しろよ……!!」
周囲から注目の的になるのは、当然の流れであった。
……だがしかし、これも悪くないな。
そう思う自分がいた事は、否定できなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます