第24話

 神さまの連日の剣術の訓練も盛り上がってきた。

「まだまだ、振りがブレているぞ、神さま」

 アイザの指導は厳しい。

「ねえ、まだ、アイザは自分がこの五人の中でいちばん強いと思ってるの?」

 おれが思いきって聞いてみると、

「そうだな。まだそう思っておる。まことは、隙だらけだしな。まだ負ける気がしない。わたしは、自分より強い男にしか抱かれるつもりはない」

 ごふっ。思わず、息が変なところから出た。

 それでは、おれはアイザを口説こうと思えば、いつでも口説けるではないか。

 いけない、いけない。こんなことを考えていては。おれには、リーゼとロザミアがいるのだ。みだりに気をとられてはいけない。

 しかし、アイザも捨てがたい美人だなあ。ああ見えて、意外にかわいいのだ。ブサイクか、かわいいかでいったら、かわいいの方に入るだろうなあ。

 まあ、リーゼとロザミアはもっとかわいいのだが。

 その日も戦闘があった。ゾンビに襲われたのだ。いつもどおり、軽くやっつけていると、またしても、歓声があがった。神さまがゾンビにも勝ったのだ。

 すごいよ、神さま。

 神さまはすでにバイオハザードをナイフだけでクリアするぐらいに強くなっているのだ。

 ゾンビを退治していると、次の日には毒毒ゾンビが襲ってきた。

 次から次へと、怪物が出てくるのがなくならない。スニーク帝国が怪物を飼いならして利用しようとしているため、怪物の方も積極的に人間界に干渉してきているのだ。

 ロザミアは、毒毒ゾンビにはかなり苦戦していた。おれが応援に入り、毒毒ゾンビを倒した。

「解毒剤なら、たっぷりあるからな」

 ロザミアはいっていた。

 神さまは一人で毒毒ゾンビを倒した。

「いやあ、最近の神さまは見ちがえるほど強くなったね」

「我輩、だんだんコツがわかってきたでござる」

「へえ、やっぱり神さまはすごいやあ」

 おれは素直に関心した。同じ神の力をもっていても、神さまなら、その力の使い方はおれとは異なるのだろう。

 神さまはおれと同じ体に入っているのに、怪物退治ができるなんて、中身が優秀だとしか思えない。

 やはり、おれのような凡人とはちがう。

「気を抜くな。また怪物が襲ってきたぞ」

 今度、襲ってきたのは、バジリスクが三匹だった。

 おれたちは三手に別れて、バジリスクと対面した。おれ、アイザは一人で一匹を相手にして、ロザミアと神さまとリーゼで、残り一匹を相手にした。

「気をつけろ。目を見ると石にされるぞ」

 ロザミアが叫んでいる。そんなこといったって、目を見ないで、どうやって戦うんだよ。

 ロザミアの指示は非常に難しいように思えた。

 おれは平気でバジリスクの目を見て戦ったが、石になることはなかった。いつものように軽く一撃でバジリスクを倒す。世界が変わる。

 アイザが苦戦していた。本当に目を見ないで戦っているようだ。

 ロザミアはもっと苦戦していた。バジリスクに引っかかれるところを、神さまに防いでもらっている。

「がんばれ、ロザミア、神さま」

 おれはそういいながら、アイザの手前のバジリスクを斬り殺した。

 そして、急いで、ロザミアの前のバジリスクに向かうと、驚くことに、神さまが倒していた。

 神さまの剣がバジリスクの首をはねている。

「大丈夫か。石にならなくてよかったな」

「ああ、本当だ」

「リーゼが睨まれた気がしたのだが、よく石にならなかったな。運がよかった」

「めかけは魔法防御は高いのです」

「わらわも、石化を防ぐ飾りを身につけているのでな。正直、バジリスクの目を見てしまったが、石にはならなかった」

「我輩は、本当にバジリスクの目を見ずに倒したでござる」

「へええ、すごおい」

 みんなが神さまを褒めた。

 その日の夜、ロザミアが落ち込んでいた。肩を落とし、涙ぐんでいる。

「どうしたんだ、ロザミア?」

 おれが声をかけると、ロザミアは答えた。

「いや、なに、気にすることではないのだが、やはり、落ち込んでなあ」

「なんだよ。何があったんだ?」

 おれが聞くと、ロザミアは哀愁漂う横顔で答えた。

「実はな、わらわが思うに、神さまはすでにわらわより強いのではないかな?」

 驚くべき告白だった。

 ロザミアがそう思っているのなら、そうなのだろう。

「いいじゃないか。おれも神さまも、ロザミアに剣を捧げた剣士なんだからさ。ロザミアは指揮官なんだよ。指揮官としては、ロザミアがいちばん優秀さ。気にせず、戦いはおれたちにまかせておけよ」

 ロザミアが体をもたれかかってきた。

「すまない。まこと。あまえてしまって。でも、正直、ショックでな」

「神さまの成長はすごいよなあ。その分、おれたち五人の戦力が増しているってことなんだから、気にすることないさ。神さまは確かに、ロザミアに剣の忠誠を誓ったよ」

 ロザミアの体温がする。こんなところをリーゼに見られたらどうしよう。

「わらわは皆の者に助けられてばかりじゃ。その恩を忘れることがあってはならんと、今、心に刻んでおるところじゃ」

「うん。それでいいと思うよ」

 おれは軽くロザミアを抱きしめた。

 夜は、静かにすぎていった。

 気づくと、リーゼは、しっかりとこの場面を見ていた。

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