第16話
旅をしていて、ふと気づいたことがある。とても奇妙なことに思えるのだが、確かにおれは何度も目撃している。
というのも、リーゼは、休憩時間になると、時々、服を脱ぎだし、全裸になって走りまわっているということだ。
ロザミアも、アイザも、神さまも、その奇妙な行動に気づいてないらしく何もいわない。おれ一人が、その奇態な現象を目で追っている。
その日も、リーゼは休憩時間になると、マントを脱ぎ、靴を脱ぎ、靴下を脱ぎ、上着を脱ぎ、下着を脱ぎ、全裸になったのだった。なんと、透き通るような肌におっぱいが丸出しではないか。小柄な体のわりに、くっきりとくびれた腰の曲線が美しい。大きいとはいえないが、小さいともいえない形のよいお碗形おっぱいが双丘をつくっている。その先には小さくて薄桃色の乳首が見える。乳輪はないに等しく小さい。そして、下半身も、はっきりと見えている。
そのリーゼがてくてくてくてくと目の前を走っていくのだ。見るなというのが無理だろう。本人の顔はすごく解放感に満ちた笑顔で、こちらに向かって走ってきたと思ったら、方向を変え、自由気ままに走りまわっている。
ロザミアが
「のん気なものだな」
などと平常心のひとことをつぶやいている。不自然に思わないのだろうか。この世界では当たり前のことなのだろうか。
走るたびにおっぱいが揺れている。それがたまらなく、おれのいちもつを刺激する。リーゼのおっぱいが揺れるたびに、おれのあそこが血流を増している。
本人のリーゼは無邪気な笑顔で走りつづけている。
こっちに向かってきて、
「救世主さま」
などと声をかけてきた。
「ああ」
と、何気なく答えるのだが、透き通るような肌が美しくてしかたない。
リーゼがただの少女ではなく、世にも貴重な天才魔道士だとわかったため、今日は思いきって聞いてみることにしてみた。
「リーゼは、その格好で走るのが好きなのか」
ああ、おれはダメな男だ。なんと無粋なことばを選んでいるのだろう。リーゼが全裸なことなど、そっとしておけばいいではないか。それをおれは、なんという危険な爆弾を刺激しようとしているのだろう。
「はい、めかけはこうして走りまわるのがいちばんの気晴らしなのです。とてもいい気分です。これはめかけの特権なのです」
そうなのか。触ってみてもいいかなあ、とか思ったりした。
それで、思いきって、聞いてみた。
「リーゼ、触ってもいいかな」
「今はダメです。救世主さま、今はリーゼの集中力を高めるための訓練中なのです」
「その格好で走りまわるのが訓練なのか」
「はい。めかけにはそうなのです、救世主さま」
そうか、訓練だったんだ。おれは納得しかけていた。
「いや、やっぱり、それは天才魔道士特有の訓練なのかな。あまり、この世界でも、他の人で真似してる人はいないのだが」
「めかけは、天才じゃないですよ」
「ああ、うん。そうだね」
おれは困ってしまった。こんな嬉しいサーヴィスがついているとは。天才魔道士と一緒でよかった。
「他の魔道士でも、そういうことする人いるの?」
「ええ、いませんよ。これはめかけの子供の頃からのくせです」
ちっ、他の女魔道士も同じならよかった。
走りまわるリーゼをじっと観察する。全身無垢の生まれたままの姿だ。
「おれも脱いでいいのかな」
などと口走ったのが失敗だった。不自然ではないか。おれは服を脱いでいったい何をするつもりなのか。
淡い期待があったりしたのだが、それは思わぬ形で崩れ去った。
リーゼの顔がみるみるうちに真っ赤になったのだ。全身がほんのりと赤身を帯びた。
何が起きたのだろう。
おれには不思議だったのだが、リーゼがいった。
「またしても想定外なのです。めかけはうっかりしていました」
下腹部を押さえて座り込んでしまった。
おれにはわけがわからなかった。
「救世主さまには見えているのですね」
「何が」
「めかけの肌がです」
「うん。そうだね」
今さら何をいっているのだろう。不思議で仕方ない。
「みんなに丸見えじゃないの。すっぽんぽんで」
リーゼは小さな声で否定した。
「ちがいます。救世主さま、めかけは魔法で姿をごまかしているので、普通の人には服を着ているように見えるのです」
おれは少しわけがわからなかった。
「じゃあ、ロザミアたちには、裸になっているのが見えないのか?」
「そうです、救世主さま」
「神さまにも?」
リーゼは首をかしげたが、
「たぶん、見えていません。見えるのは、世界で救世主さまただ一人です」
と答えた。
なんという幸運。
「あの、気にしなくていいから、おれのことは」
いかにごまかすか。現状維持を断固として続行しなければならない。
「めかけはどうしたらいいでしょう」
「訓練をさぼるのは、おれの召喚が不安定になる恐れがある」
ことばが滑らかに出てきた。なんという強攻策。
「今までどおりにしたまえ。これは命令だ。でなければ、おれの命が危険かもしれない」
脅迫。なんというわがまま。この透き通った肌と、お碗形のおっぱいを見るがために。
「はい、救世主さま。めかけは命令に逆らいません」
うむ、それでよいのだ。作戦は成功だ。
少し気になったので余分なひとことを聞いてみた。
「それで、リーゼは、こういうことをどう思っているのかな。というのは、不純異性交遊について」
おれはなんとアホなことを聞いているのだろう。
「それが、めかけは子供の頃から魔法の勉強ばかりしていたので、男女の問題はまったく知らないのです」
うむ、つまり、清純な少女が素っ裸で走りまわっているのだ。おれは一向にかまわない。
それからも時々、リーゼは特殊な訓練をしていた。
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