第14話

「しかし、こう何度も怪物に襲撃されると、うっとおしくなってくるなあ」

 アイザが珍しくへばっている。

「そういうな、アイザ。旅を終えるまでには、まだ、今までの何倍も戦わなければならない。根をあげるわけにはいかないぞ」

 おれが諭すと、

「もちろんだ。決して、戦うのが嫌になったわけではない。むしろ、修行した剣の腕を充分に生かせる機会に恵まれて感謝している」

 アイザが慌てて否定していた。

「でも、戦わなくてすむなら、戦わない方がよいのです。めかけも疲れてきました」

 リーゼが珍しくへばっている。

「ロザミアは大丈夫なのか」

 おれがたずねると、

「わらわは決して弱みを見せるわけにはいかない立場なのでな」

 と悲しそうに答えた。

「めかけはたまには戦わなくても良い相手に出会いたいです」

 リーゼがへばっている。戦力にならない魔道士だが、リーゼなりに頑張って戦ってくれているのはわかる。疲れもたまっているのだろう。

 そんな時に出会ったのが、黄金巨人だった。

 体が黄金でできた身長五メートルはある巨人である。動きは遅いが、パンチは痛そうだ。

「まこと、ちょっと目がおかしくなったかもしれない。今、襲ってきている敵の様子を教えてくれないか」

 アイザがそんなことをいっている。

「襲ってきている敵って、黄金巨人だが。黄金でできた巨人だ」

「そうだな。まちがいなく、あれは黄金でできているのだな」

 アイザが夢でも見ているような顔をしている。

「あれは戦わなくてもいい相手ではないでしょうか。めかけにはそう思えます。動きが遅いので、走れば逃げれるのではないでしょうか」

「何をいうのだ、リーゼ。あれこそ、まさに戦わなければならない相手ではないか。黄金だぞ。黄金でできているんだぞ。倒せば、金塊が山のように手に入るではないか」

 アイザがきつくいう。

「ひええ、めかけは黄金なんて、重くて運べないのです」

「安心しろ。ここに行商を呼べばいい。一攫千金のチャンスだ」

 アイザは嬉々としている。

「まあ、路銀が多いことにこしたことはないのだがな。わらわは資金に困ったことはないが」

「そうですよね、ロザミア様。ロザミア様、あの黄金はわたしにいただけませんか。このアイザが一人で倒して参ります」

 アイザがお金に目がくらんだ。大丈夫だろうか。

「うむ。黄金が欲しいなら、アイザ、お主、一人で倒して参れ」

 ロザミアも気軽に命じる。

「待て。あの黄金は我輩のものだ。黄金が欲しければ、我輩より先に倒すのだな」

「何お、神さま」

 そして、アイザと神さまが二人で黄金巨人に突っ込んでいった。

「いいんですかね、これで」

 リーゼが心配している。

「まあ、お金がほしいのは皆同じじゃ。悪いことではあるまい」

「おれ、戦わないでいいのかなあ」

「はあ、めかけはあの二人が心配です」

 リーゼの心配は的中し、まずは神さまが黄金巨人に殴られて吹っ飛んだ。とても、動けそうにないくらい痛がっている。

「ああ、ああ、神さまは、神さまなのに、金銭欲に溺れてますね」

「うん。本当にどうしようもない神さまだな、リーゼ」

 おれとリーゼがのんびり話していると、

「へぶお」

 アイザも黄金巨人に殴られて吹っ飛んだ。

「あ」

 リーゼが小さく呟いた。

 おれがアイザのところへ行ってみると、

「助けてくれ、まこと」

 と、きれぎれの声でうめいていた。

 これだから、お金に目がくらんだやつらは。黄金でできた巨人が弱いわけないではないか。

 しかたなく、おれが黄金巨人をぶった斬った。腹を真っ二つにして、首をはねると、黄金巨人は動かなくなった。

「うむ。よくやった、まこと」

 ロザミアが褒めてくれた。

「この黄金は売り払い、五人で等分にしよう」

 ロザミアがそう決めた。

 街から行商が呼ばれ、黄金巨人の死体を回収していった。

 すごく高い値で売れたのだという。

 おれもリーゼも、日本円にして、五億円ぐらいの大金持ちになった。

 教訓。弱いと思うな、黄金巨人。

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