第12話
ロザミアは城の人たちと相談し、将軍を決め、バッシュ帝国軍を組織してもらうことにした。ナインハルト将軍は、バッシュ帝国総司令官となり、軍を動かし、スニーク帝国と戦うことになった。
おれとリーゼとアイザと神さまは、ロザミア姫の直属軍として任命され、今までどおり、ロザミアと一緒に五人で旅をすることになった。
「なんだか、不思議な気分ですね。バッシュ帝国総司令官の上に立つ総大将の直属軍というものは」
リーゼがいった。
「うむ。わらわも迷ったのだが、やはり信頼できる者といた方が気が楽で安心じゃ。それに、今のやり方で成功しているのだから、やり方を変える必要もあるまい。わらわは、少数精鋭で敵陣を奇襲しつづけるつもりじゃ」
ロザミアのことばを聞いて、アイザが真面目に提言した。
「ロザミア様、わたしからこのようなことをいうのは出すぎたことかもしれませんが、皇帝位にはいつ戴冠されるのですか? ロザミア様しか、バッシュ帝国の帝位継承権をもたない以上、早めに戴冠された方が、味方の士気も上がると思うのですが」
ロザミアは困った顔で答える。
「わらわは今すぐ戴冠してもかまわないと思っておる。だが、戴冠の儀式は、婚礼の後に行われるのが慣例じゃ。婚礼の問題を解決せねば、戴冠するのは気が引けるのじゃ」
「そうでありましたか。差し出がましいことを申し上げてしまいました」
「何かまわぬ。確かに、早急に帝位についた方がよく、婚礼の儀の前に戴冠した前例がないわけではない」
おれは気になってたずねた。
「ひょっとして、今、ロザミアの許婚のところに向かっているのか」
「そうじゃが。何か悪かろうか。真っ直ぐ帝都を目指しても良いのじゃが、多少のまわり道になるなあ」
「いや、異論があるわけじゃないんだ」
ロザミアの許婚は、アレクサンドル・シューマッハというらしい。体は弱いが、賢明な男なのだそうだ。ロザミアとの仲も決して悪いわけではないらしい。
五日の旅の果て、ロザミアの許婚の屋敷についた。スニーク帝国に占領されている街だとはいえ、かなり大きな街で、アレクサンドルの屋敷は大豪邸だった。
だが、不思議なもので、屋敷には人が一人もいない。まったくの無人だった。廃屋になっているのではないだろうか。
おれたちは不審に思って、勝手に門を開け、屋敷の中へ入っていった。
無人の屋敷を探すこと、数時間、アレクサンドルは、自室の小部屋で死んでいた。胸が焼かれ、おそらく、魔法で殺されている。
「なんということじゃ。アレクサンドルが、死んだ」
ロザミアが呆然としていると、屋敷の奥からキキキキッと笑う小悪魔の声が聞こえてきた。ミニデーモンだ。五匹いる。
「ききききっ、婚約者を殺された気分はどうだ、ロザミア姫。いっておくけど、悪いのはロザミア姫の方だよ。スニーク帝国に逆らうんだから、これくらいの罰を受けて当然さ」
「ききききっ、お前たちも死んでしまえ。それ」
ミニデーモンが炎の魔法で、おれたちを燃やそうとしてきた。火球が宙を飛んでくる。
「危ない。神さまを盾にしろ」
アイザが神さまを火球にぶつける。
「あちちちちちっ、熱い。熱いでござるよ、アイザ殿」
「神さまはこれくらいしか役に立つことがないんだから、我慢しろ」
アイザが酷いことをいっている。
「急いで、この小悪魔たちを倒すのじゃ」
ロザミアが剣を抜いた。
ミニデーモンから、また火球が飛んでくる。おれに当たったが、痛くもなんともない。
次の火球は、リーゼに当たったが、やはり無傷のようだ。
「えへへ、めかけは魔法防御は高いのです」
リーゼが無事なら、安心して戦える。この戦いは楽かもしれない。
「おりゃ」
おれは走って、ミニデーモンを一匹、剣の一撃で斬り殺す。
「あわわわ、お前たち、我々に逆らうつもりだな。許しがたい。許しがたいぞ」
ミニデーモンが文句をいっているが、おれはその間に二匹目を倒す。
飛んできた火球を、再び、アイザが神さまを盾にして防ぐ。
「熱い! 無茶苦茶でござる」
アイザは魔法は苦手なのだろうか。今回は、防戦一方だ。おれが三匹目を倒すと、リーゼが珍しく最前線に出て、ミニデーモンを杖で叩いている。だが、致命傷は与えられないようだ。
「リーゼ、おれに任せろ」
おれは四匹目、五匹目と連続して、剣で斬り殺す。
「あははは、めかけの出番がなかったのです」
「いや、今回はリーゼはよくやった方だよ」
おれはリーゼを心配して、火球で燃えたはずのリーゼの体を調べた。
「心配しなくても、めかけは大丈夫なのです」
「そんなこといったって、万が一のことがあったらどうするんだ」
おれがそういっていたら、ロザミアがしかめっ面で顔で声をかけてきた。
「ほほう、まことは、わらわよりもリーゼが気になるのだな」
「あ、いや、別に特に気にしているわけでは」
「ふん、わらわの許婚は死んだ。わらわは新しく、婿殿を探さねばならぬ。まことのようなスケベには、ふさわしくないからな」
「なんだよ。なんで、おれが出て来るんだよ。おれのどこがダメなのさ」
「まことは、わらわのことなんて、好きではあるまい」
「そんなことないよ。ロザミアだって、大事な仲間さ」
すると、ロザミアが顔を真っ赤にしていっていた。
「別に、わらわはそんなことをいわれても嬉しくないのじゃからな」
その日の夜もふけていった。
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