第7話
「この近くに、スニーク帝国の小城があるな。手始めに、その城から攻め落としていくか」
ロザミアが帝国奪還のための作戦を練る。
「たった五人で、城攻めですか、ロザミア様」
アイザが意見をいうが、ロザミアは自分の作戦を押した。
「そうだ。我々、五人で、スニーク帝国の城を攻め落としてやろう。わらわが決起したことを知れば、バッシュ帝国をしたう者が集まってくるかもしれない」
ということで、五人で、スニーク帝国の小城を攻め落とすことになった。
「どこから城に潜入しましょうか、ロザミア様」
「正面の門が開いているのだ。こそこそすることもあるまい。正門を通って、中央突破しよう。城主の間まで一直線に進撃してくれる」
「はっ、ロザミア様」
おれは戦争に詳しい事情も知らずに、一方に加担するのにためらいがあったが、ロザミアはすでに大切な友人だ。ロザミアのために戦うのも悪くはない気がしていた。
それで、てっきり、戦争になるのだと思っていたのだが、事情は思っていたのとちょっとちがった。
スニーク帝国の小城は、怪物たちが警護しているのである。
「なんで、怪物が門番やってるんだ、ロザミア」
おれが聞くと、ロザミアは答えた。
「スニーク帝国は、魔族に魂を売り渡し、怪物たちを飼いならして、帝国を支配しているのだ」
なるほど。怪物の国なら、やっつけてしまうのもかまわないかもしれない。
おれたちが正面の門を通った時だった。門番のガルムを従えている兵士が叫んだ。
「おい、あそこにいるのは、バッシュ帝国のロザミア姫ではないか」
すぐに大騒ぎになった。
「ロザミア姫は指名手配されている。急いで、捕らえろ」
兵士の上官が怒鳴った。ガルムがおれたちを襲ってきた。
「ロザミア様、ここはわたしが」
アイザがガルムに突撃したが、どうも勝てそうにない。おれも加勢に加わった。おれの一撃で、世界が変わる。ガルムはおれの攻撃で破裂して死んだ。
「なんだ、どうしたというのだ。ガルムが殺されたぞ。たいへんだ。城主に急いで報告しろ。狼藉ものが潜入したと」
スニーク兵が叫んでいる。
ロザミアがすらっと剣を抜いて、まわりにいる群衆に向かって宣言した。
「わらわはバッシュ帝国の帝位継承権をもつロザミア・バッシュである。バッシュ帝国はまだ滅びてはいない。これからわらわの軍がスニーク帝国を滅亡させるであろう。バッシュ帝国に忠誠を誓う者は、わらわに続け」
スニーク兵も黙ってはいなかった。
「バッシュ帝国の残党に好きにさせるな。時代が変わったことを思い知らせてやれ。それ、突撃しろ」
おれとアイザで、迫り来るスニーク兵と怪物たちをばっさばっさと斬り倒した。神さまもリーゼも後ろの方で戦っている。
ロザミアもみずから剣を抜いて、正面廊下を前進した。
「つ、強い。なんだ、この強さは。たった五人で、この城を攻め落とすつもりか」
「気をつけろ。本当に占領されてしまうぞ」
「城主さまは、城主の間においでになるのか」
八十くらいの兵と怪物を倒して、おれたちロザミア軍は、城主の間へ進軍した。
そこに、敵軍の城主がいた。近くに、魔族が控えている。魔族はスニーク兵を監視しているのだろうか。
「これはこれは、ロザミア姫。こんな田舎の小城にようこそ、おいでくださいました。マギトラ、どうやら、敵軍は相当な凄腕のようだ。我が城を守るのに力を貸してくれないかな」
「いいだろう。人間よ。このマギトラがいる限り、スニーク帝国の城が落とされることはない」
マギトラと呼ばれた魔族がおれたちに向かってきた。青白い肌、紫の衣装を着て、赤い目をしている。魔族だ。
「アイザ、魔族の相手はおれに任せろ。アイザは城主を倒せ」
「魔族相手にすごい自信だな、まこと。いいだろう。魔族の相手は、今日のところはおまえに任そう」
アイザはスニーク帝国の城主に向かって、足を進めた。それを制しようとする魔族を、おれが剣で斬り倒す。世界が変わった。魔族はおれの攻撃で一撃で死んだ。
アイザが城主の首をはねる。
「見たか、スニークの雑兵ども。これがバッシュ帝国の力だ」
アイザが大声でいった。
周りの群集がざわめいた。
「ロザミア姫の手下がこれほどの猛者たちとは。バッシュ帝国はやはりまだ滅んではいないのではないか」
そんなささやきが広がっていった。
ロザミアが剣を高く掲げ、勝ち名のりをあげた。
「城主はバッシュ帝国の手によって葬られた。これより、この城はバッシュ帝国が再統治する。魔族と怪物はみんな叩き出せ」
「おおおおおおおお!」
と大歓声があがった。この城の生き残りたちは、再び、ロザミアへの忠誠を誓うことを約束し、順番に城主の椅子に座ったロザミアに拝礼に来た。ロザミアの前に行列ができた。
怪物と魔族はこの城から追い出され、逃げていった。
「どうやら、初戦は勝ったようだな」
おれはリーゼが無事か見に行った。リーゼは元気そうにしていた。
「聞いてください、救世主さま。めかけも敵兵を一人やっつけたのです」
笑いながら、リーゼが近寄ってきた。
「おお、それはすごいなあ。やったなあ、リーゼ」
おれがリーゼを褒めていると、アイザがいった。
「敵軍のほとんどは、わたしとまこととロザミア様でやっつけたのだ。神さまが倒した敵はいまだにゼロと」
圧倒的な差を知らされて、神さまは落ちこんでいた。
「悔しい。この体はいうことを聞かん。我輩は神さまなのに」
「おい、神さま、ジュースとパンを買って来い」
アイザが神さまに命令した。
「我輩、神さまなのに」
神さまは仕方なく、ジュースとパンを買いに行った。
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