第19話
ミタノアとサントロの二人は時間旅行者の公園の隣で議論をしていた。そこにミヤウラは到着した。その手には刀が、一本の長い刀が握られていた。直線刀だ。トチガミが地球の正統継承者であったというのなら、ミヤウラもまた、直線刀の正統継承者なのだった。
「あら、ミヤウラじゃない。これで結局、八人全員がそろったわけね。八人全員で殺しあったわけよ」
ミタノアはそういうなり、天体反動銃を使って、ジナの極小ブラックホールを移動させた。
「試験よ、試験。あなた、ブラックホールに勝てるかなあ」
ミタノアが極小ブラックホールをミヤウラに向かって飛ばした。直撃の軌道だ。
「たあっ」
気合一閃、ミヤウラの宇宙鍛錬刀が極小ブラックホールを真っ二つに切った。切られた極小ブラックホールは消滅した。
「余分な腕試しなどはやめていただこう。拙者の持つ武器は威力がありすぎて、その通過した宇宙の内側を灰燼にせんばかりに破壊してしまうものである」
「あら、そうなのね」
「拙者が軍隊でござる。誅殺に参った。覚悟なされい」
ミヤウラが一歩一歩、サントロに対して間合いをつめていく。地球を直接破壊したのはサントロだ。まずはサントロから切らねば筋が通らない。
「やべえ」
サントロが凍りついた一点をミヤウラに投げた。ゼロ次元の宇宙がミヤウラに向かって飛んだ。またしても、直撃軌道だ。
「たあっ」
気合一閃、ミヤウラの宇宙鍛錬刀は正確に凍りついた一点を真っ二つにぶった切った。ごおん、と宇宙鍛錬刀が音を立てて鳴った。ビッグバンを起こさなかった宇宙である凍りついた一点は、宇宙を鍛えあげて作った宇宙鍛錬刀に、わずかばかり威力で負けてしまったのだ。宇宙鍛錬刀がごおんと音を立てて鳴っているのは、凍りついた一点がかなり堅いものであった証拠である。
まずい。このままでは、サントロが負けてしまいそうだ。サントロの武器では、ミヤウラの武器に勝てない。そして、ミヤウラは隙を見せない。勝ち目はひとつしかなかった。すなわち、ビッグバンを起こすことだ。ジェスタの天体反動銃のエネルギーがあれば、それができる。
「そもそも拙者、残念でござる。もともと、我らが八名、同じ境遇を受けし巡り合わせにあったもの。それが、八人が八人とも殺しあわねばならんとは、残念でござる。我らが八名が『失格者』に認定されたことなど、暴走する機械群の罠に決まっておった。それが、もう五人も死んでしまったとは、まことに迂闊なことだとしか申しようがござらん。これは、暴走する機械群にとっては、人類を『失格者』に認定した場合にどうなるのかのシミュレイションに他ならん。我々は八人中五人が死亡するというデータを暴走する機械群に渡してしまったことになるのでござる。まことに危険としかいいようがござらん」
ミヤウラがうめいた。
「暴走する機械群のシミュレイション?」
ミタノアが聞き返した。
「そうでござる。暴走する機械群にとって、人の動きはすべてデータである。我ら八名は、『失格者』に認定すれば人類は殺しあうというデータを未来に与えてしまったのである。これから先、『失格者』に認定するだけで人類を殺し合わせることができるように、暴走する機械群の知性が変化するのが目に浮かぶようでござる」
ミヤウラがいった。
「そして、生き残った三人もまだ殺しあおうとしているわけね」
「その通りでござる。ことによっては全滅するかもしれん」
「案外、たいへんな状況ね」
ミタノアがいった。
「『失格者』の一覧でわたしたちについていた順位はいったい何の順位かわかる?」
「名簿順のようなものでござろう。何の意味もござらん。暴走する機械群が拙者たちを争わせるように心理的に誘導したにすぎまい」
ミヤウラがいった。
「おれは退くわけにはいかないんだなあ。だって、ビッグバンを起こすんだ。暴走する機械群だろうと、残った三人もまとめてふっとぶんだ。関係ないね」
サントロが会話に割って入った。
「拙者も退くわけにはいかんのでござる。なぜなら、拙者は軍隊であるからにして。お主がビッグバンを起こすというのなら、拙者はビッグバンも切る覚悟でござる」
はたして、三人はどうなるのであろうか。
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