第3話 涙雨の再会

第3話 涙雨の再会


「ほぇ~・・・」と、歩きながらため息をついた私。


午前中のテストが終わってから、先生に呼び出しをくらって、説教されてしまった・・・

明日、遅刻したらもっとうるさいんやろなぁ。


外を見ると、さっきまで、晴れだった空が、曇り空へと変わっている。


うん、曇り空もスキ。

なんか、この地球が泣きそうやから。

寂しいのかな、って思う。

だから、曇り空は、泣きたいんやけど、泣けない、みたいな感情があるような気がすんねん。


・・・でもさ、雨が降ってこないうちに帰ろ。

と、校舎の外に出て、立ったまま、空を見上げていた。


「また、空見てるやん」


振り返ると、琴実(ことみ)がそばにいた。なんだか、ちょっとさびしそうな感じがするんやけど・・・

気のせいではないと思う。


「うん、雨が降りそやね」


私は、また空を見上げて、つぶやいた。


「ところで、どうしたん、琴実? 」


琴実は、「別に」って、小石を蹴飛ばしながら、言った。

やっぱり何かあったんや、って私は、思った。


その瞬間、まわりの風景がグレーになって、ふと、こんなことあったって思った。

デジャヴっていうんかな?

私は昔から時々、感じるんやけど。

今、初めてあったことやのに、体験したような気がする感覚。


どうやったんやろ・・・

あまりよく思い出せへんけど、琴美がその後、なんか私に言ってきた気がしてんけど、私は何も聞かへんかったんかな?

よく分からんねんけど、悪い結果になってなかったような気がするねんけど・・・


「それよりさ、ふう。先生に怒られたやろ? 」

琴美は、手を後ろに組んで、話題を変えてきたので、私は考えるのをやめた。


「うん、安部(あべ)がうるさくて。ほんま、うざいわ!」

私は、疲れた顔を作った。


「安部、確かにうざいけど、呼び出しされたのは、1時間目のテストが、安部の英語やったからやで」

「それは分かってんねんけど。でも、ほんま、大人って、怒ればええとか思ってへん? 」

「あ~分かる。大人やから、言うこと聞けみたいな感じやんな?」


そんなぐちを言いながら、二人で下校。

毎日の当たり前な風景なん、これが。


「じゃあね、ふう。明日は遅刻したらあかんで。落第決定やで!」

「怖いこと言わんといてよ。分かってるって。琴実もバイト頑張ってね~」


と、駅まで二人で歩いて別れる。

琴実とは、家が近くなんやけど、バイトしてるから、いつも駅で別れる。

私は、バイトとか出来ひん。

別に、お母さんに止められてるとかいう訳じゃないんやけど、外に出るのがめんどくさい。

おしゃれがしたいとか、あまり思わんし、ジャージはほんま最高やし・・・

夜中にコンビニに行って、ポテトチップス買うのが、私の唯一の趣味やから・・・


って、私って、暗いなぁ。

あ、あかんわ。周りの高校生たちが、まぶしく見えてくるがな。


と、右手を前にして、輝いている高校生たちを見えないようにした時

私のスマホにお母さんから連絡が来た。


「帰りに、白菜と椎茸買ってきて。ママより」


今日は、お鍋なん? なんで、肉いらへんの?

私が遊びに行かへん日は・・・って言っても、ほとんどまっすぐ家に帰るから、平日は毎日やけど、買い物は、私の仕事やねん。


お母さんは、仕事で帰ってくるんが遅いし、疲れてるから。

私は、お母さんとの2人暮らしやから、洗濯とか、洗い物とか、一応、やってるつもりでいるねん。

掃除は苦手なんやけどね・・・


「わかった」


私は、お母さんに、返信する。

すると、顔にしずくが落ちてきた。


「あ、降ってきた」


私は、スマホを持ったまま、空を見上げた。

グレーの雲が、真っ黒い雲へと変わっていた。

天気予報を見ることもめんどくさいので、もちろん、傘なんて持ってきてへん。


私は、走ることも苦手なので、早歩きで帰ることにした。

スーパーにも寄らなあかんやん。


私は、帰りの途中にあるスーパーに寄って、白菜と椎茸と、ポテトを買ってしまった。


どうでもええ話なんやけどね。

中学生やった時に、プリングル○が大好きで、一時、太ってしまったこともあったから、今はやめてんねん。

見た目は、どうでもいいんやけど、体重が重くなると、動くのがえらくて、えらくて、やから、食べへん。

階段あがるだけで、ひざが痛くなるんやで。


自分の体が重くなって、外に出るのがしんどくなって、登校拒否したぐらいやから、私のめんどくさがりも相当なもんやと思う。

その時から、お母さんの家事を手伝って、体重が減ったんやったっけ?

家事って、結構きつい労働なんやけど、誰かがしなくちゃならないからね。

お母さんは、私のせいで、今まで自分のしたいことも出来へんかったから、少しでも、といちおうは思っているつもりなん。


お店から出ると、雨はますます激しくなってきた。

どうせ濡れるんやから、と思ったから、もう、ゆっくり歩くことにした。

いそいだって、雨に濡れる量は変わらへんような気がするから。


それに、雨が降った時の空もスキやなぁ~。

私に向かって、涙が降ってるみたいな感じがええやん!それに、水浴びしてるような気がして、めっちゃ気持ちいい。


すると、今朝のあの柴犬が、道の真ん中に座っていた。

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