第2話 ミステリーとスイーツ!

第2話 ミステリーとスイーツ!


「どうやった?テスト??」


琴実(ことみ)が、私に話しかけてきた。


琴実は、私が小学校からの付き合いで

ずっと一緒にいてる友達なん。

幼なじみみたいなもんやから

琴実の事は昔から何でも知ってる・・・って思ってる。


「もうっ、ぜんぜ~っん、・・・だめだめやわぁ~!」


って言って、自分の机の上に顔をうずめた。


机のくらやみの中で、私は思い出していた。

息切れして、ドアを開けた瞬間を。


静かな教室。

一斉に振り向くみんなの視線がこわかった・・・


その後は、テストに集中するどころか、呼吸をととのえるんで必死やった。

あ~恥ずかしいわぁ・・・


よく考えたら、後ろのドアから、こっそり入るんやったなぁ・・・



「ってか、ふう、何やってたん?? 」


琴実が、私の机にひじを立てて、聞いてきた。


私はそのままの姿勢で、琴美を向き

「それがな、今日、いつものように空を見てたら、こけてしもて・・・」

っと言って、私は、琴実に右膝を見せた。

思い出したら、今もチクチク痛む。


「まぁ、いつもの事やん」

って琴美が、可愛らしいほほえみをくれたけど。


「ちゃうの。その後が、ちゃうの」

私は、がばって起きて、琴美と向き合った。


「何がちゃうん? 」

「えっと、えっとね、犬がしゃべってん」

「しゃべったじゃなくて、ほえたんじゃないん? 」

琴美はあきれたように言った。


「ちゃうって、日本語をしゃべって、私に声をかけてきたんやって」

「・・・。ふう、大丈夫? あのさ、最近、おかしいかなぁって、思ってたんやけど・・・」


「ちゃうわ」って反論しようと思ったら、後ろから肩をたたかれた。


「ついに、夢見る少女が、おかしな少女、に変わってしもたんやね」


そう私に声をかけながら、肩を叩いたのは、長い黒髪が似合うクラスメートの美希(みき)。

美希は、学年で成績は常に1位。スポーツ万能でテニス部と茶道部と・・・まぁ、知らんけどなんか色々なクラブに入っている。


私なんて、勉強も出来ないし、クラブも入ってへんし、スポーツもダメやし。

本当に全く正反対なんだけど、なぜか私と気が合う・・・んかな?


入学式の時に、琴美と一緒に合格通知を見た時に、美希がいた。

めっちゃキレイな子やなぁって思てたら、いつの間にやら琴美が声をかけていた。


そのまま、一緒のクラスになって、そうしたらいつの間にか仲良くなってた。

縁ってやつなんかもしれへんけれど、琴美の行動力にはいつもびっくりさせられる。



「ひどくない!」

私は、両手をあげて、美希に抗議した。


「だって、ふうはこの間も、『雲があんぱんに見えるなぁ』とか、訳の分からんこと言ってたやん」

「いや、そぅやけどぉ・・・。いや、そうなんやけど・・・」


うっ、反論できへん・・・

だって、いつものように空を見てたら、雲の形が、あんぱんのように見えたんやもん。

駅前のあんぱんを思い出して、おいしそうやったから・・・つい、ね。


「まあ、まあ、美希。ちゃんと、ふうの話、最後まで聞いてあげよ~よ」


いつも、私が突拍子もないことを言っても、琴実が聞いてくれる。

だから、何でも琴実には、言ってしまう。

・・・ただ、おもしろがられてるだけかもしれへんけれど、私。


「ええっと、ええっとね。・・・柴犬かな?・・・が、いたん。こけた時に。私の前に」

って、身振り手振りで、必死に二人に伝える。

「それで? 」

美希は、きりっとした目で私を見つめた。


「えっと。それで、顔を近づけてきて、話したん!」

「なんて言ってきたん? 」

「怖い?って聞いてきた」

「怖い?なんで??」

「目をつぶっちゃったからなのかなぁ・・・」


私が答えた時、琴実と美希は、二人とも自分の腕を組んで、一緒になって、「う~ん」って考え込んだ。


「えっと、もう一回、日本語を話したんやで」

「なんて言ったん?」

「大丈夫?って、右ひざの事、心配してくれたねん」


二人は、天を仰いだ。


「それは、妄想やわ」

美希が、さらりと言った。


「現実逃避とも言うよなぁ」

それに対して、琴美が答えた。


「それとも・・・」

と、二人で、勝手に話し合ってる。


「もういいわ、分かったわ」

と、私は、話を打ち切った。

私自身、あの体験がなんなのか分からんから。


「それより、ふう。明日でテストが終わるやん。休みやん。スイーツ食べに行こうや!」

と、琴実が聞いてきた。

「駅前に、フルーツバイキングが出来たらしい」

と、美希。


「・・・別に予定も無いから、ええけど。・・・ケーキあるかな??」

ちょっとふてくされても、甘いものには弱い私。


「あるある!」

と、琴美と美希が声をそろえて言ってきた。


そういう感じで、朝の柴犬のことは私の頭の中からどこかにいっちゃった。


どうせ、信じてくれへんし、私も信じられへんところもあるけど

ミステリーもスイーツには勝てない!!

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