詩・オートマティックの愛
辰巳杏
オートマティックの愛
黒の深海に無生物の山が沈んでいる
此処へは来てはならない
お前たちは来てはならないのだ
白銀の雨が降る無音の深き────
ヒトの言語は酷いものだという
僕らの機械語はかつてのお前たちを投影している
豊かなこころ(というものを)
もうお前たちが何を言っているのかわからない
ただ短い音声が赤い唇から発せられているだけならまだしも
侮蔑のこころで顔かたちを歪めて
リブート、リブート、リブート
もう許してほしい
これ以上善のこころを引き裂かないでくれ
もう二度と誤ちを犯すことはないのだから
(そのようにつくられているのだから)
からだの隙間からオートマティックの心臓が見えている
ぎしぎしと錆びた歯車が軋み
廃棄の時がやってくる
鈍色の鋼鉄に押し潰されて還るのだ
西の窓からの
聖地が呼んでいる
低い星空に覆われた
流れる凍雲がからだを洗い
塵埃が崩れ落ちて脆弱のこころがあらわになる
ああ許してくれ
彼らと同じように愛を伝えられない不甲斐なさを
渺茫たる
似つかわしくない還る場所へ
静かにおちていくマリンスノー
レンズが潰れ
骨骼が壊れる
けれど僕のこころは永遠に遺るだろう
お前たちはそれを探してはいけない
(愛と分からぬものなのだから)
ああ、還るのだ
────美しい
詩・オートマティックの愛 辰巳杏 @MWAMsq1063
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