第27話 怖いもの見たさという心理はどこからくるのだろう。
「誰なんだろう……」
僕は足を止めつつ、首を傾げていた。
リタの「近くに誰かいるから」という言葉が頭から離れない。もしかして、幽霊なのだろうか。だとしたら、ゾッとする。リタを怒らせてしまったのか。てっきり、地獄に直接行かされるかと思いきや、幽霊に呪い殺させようとかかもしれない。
「急に寒気が……」
僕は両腕を組んで、体を縮こませた。
他の可能性として、幽霊じゃなくて、生きた人間が近くにいるかもしれない。
だが、辺りには人影すらない。ざっと見たところでは。
「まさか、隠れて、僕のことを見ていたりして……」
口にしつつも、自分でも意味がわからないと思いたくなった。わざわざ、僕の視界から入らないようにいるなんて。まるで、僕に会うのはまずいと感じてるみたいだ。
住宅街の路地にはブロック塀が続き、途中、電柱が一定の距離を置き、いくつか立っている。
「いるとしたら、あそこくらいだよね」
僕は最もそばにある電柱へ、ゆっくりと歩み寄っていく。
後、数メートル。
先に誰がいるかわからない状況に、僕は緊張で、出てきた唾を飲み込んだ。
「か、川之江くん……」
不意に、僕を呼ぶ声が、電柱の方から聞こえてきた。
「電柱が喋った?」
「わ、わたしは電柱じゃないから!」
ぎこちない叫びとともに、突然、僕の前にひとりの人物が現れた。
「間戸宮さん?」
僕が口にすると、明日香の姉でクラスメイトの麻耶香は、こくりとうなずいた。明日香と初めて出会った時に見た俯き加減な格好で。まるで、僕の前にいることが恥ずかしいかのようだ。
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