僕は夢の中

二帆

第1話

「せ、先輩っ!ずっと、す、好き、好きでした!付き合ってください」


彼女は袖を拳をプルプルとさせながら握りしめ、僕に向かう。

彼女。ふわっとしたショートボブ、ネコのように大きな二重をした目、やや幼さが残っているが全体的に整っている童顔な彼女。部活の後輩でいつも目で追っていただけだと思っていただけの彼女。そんな僕の手の届かない彼女、そんな彼女が僕に、夢みたいに。

今日僕は、そんな彼女に呼び出された。そして、呼び出された場所を訪れると、開口一番にそんな告白をして来た。

僕は突然の出来事に狼狽えてしまう。あまりの出来事にこれは夢なのではと思ってしまう。


「えっ?」


僕は理解ができずに聞き返してしまう。

すると、彼女は少し潤ませた、上目遣いで。


「先輩のことずっと好きだったんです。告白しようしようと思ってたけど、勇気がでなくて、でも!もうわたしの心の中に閉じ込めておくのは辛いんです。もう一度言います、先輩好きです。わたしと付き合ってください」


彼女は真剣な目つきでそう告白する。

その彼女の真剣な眼差しで僕はこれが冗談な嘘ではないというのがわかった。そもそも僕が知る限りじゃ彼女はこんな事を冗談や嘘なんかではな口にしない。

なので、僕は彼女の真剣な告白に応える。


「僕もずっと——。」


と、彼女をそっと引き寄せる。そして、腕を回し腕の中に引き寄せるが、

僕はそこでなにか身体が沈んでいく気がした——。






目を開けるとそこは無の部屋だ。四面を冷たい壁で覆っている。窓はなく灯りもない。

俺はそっと頭に被っていた『それ』を外す。そして、先ほどの出来事を理解する。理解をすると、心に大きな悄然が生まれる。それを振り払うようにまた頭に『それ』を装着する。装着するときに二度目の時の注意事項をなにかあった気がしたが、それを振り払いまた俺は落ちていく——。








そっと、身体を揺すられる。それとどこか優しい声が聞こえてくる。


「おーい、私の前でよく寝れるわね」


そんな声で俺は目を覚ます。


「起きないとイタズラしちゃうわよ?」


耳元で色っぽく囁かれる。

俺はそんなイタズラというワードにドギマギしながらそっと目を開ける。

薄目をすると、眼前には心を奪われるような長い髪の美しい顔があった。


「ほらやっぱり起きてるじゃない」

「おはようございます」

「私が折角勉強を教えてあげるって言ったのによく寝れるわね」

「いや〜、勉強って音だけで寝れますよ」


そういうとオデコをペチンッと小突かれる。

彼女はこの図書室で知り合った、一つ上の先輩。とても綺麗で艶のある長い黒髪、大和撫子という言葉が似合うとても綺麗、美しい女性である。

そんな彼女は頬杖つきながら優しい目と優しい口調で、


「そんな屁理屈を言う前にしっかりと勉強しないと進級できないわよ?後輩と同じ教室になっちゃうわ」

「進級できないときはきっと学校やめますよ」


そんな冗談を言うと。

ガタッと音を鳴らしながら慌てて立ち上がる。


「ちょっ、学校やめちゃったら会えないじゃない」

「へー、俺と会えなくなると嫌なんですか?」

「そ、そんなことは言ってない」

「じゃあ別に学校来たくもないしやめようかな」

「なっ!」

「冗談ですよ」

「っ!もう、そんな冗談言ってないで早くこれらの式を頭に入れなさい。冗談じゃなくなっちゃうわ」

「はいはい」


彼女は椅子を直してまた僕の前に座り、分かりやすく、丁寧に勉強を教えてくれる。そんな夢のように、優しい空気に包まれ時間が過ぎていく。すると、


——こんな風に優しく教えてくれたら進級できたのかな?

俺の頭にそんな考えが浮かぶ。

……えっ?進級できたのかな?

——あんな風な人生を歩まなくてよかったのかな?

そんなことも浮かぶ。

——これが現実だったらよかったのに。

すると、突然頭に黒い影が走った気がした。そんな次の瞬間、頭に表しようのない激痛が走ったと思うと、ピッという音とともになにも考えられなくなっていた——。















「あーあ」


モニターを見ながら呆れと、失笑の混じったため息を吐く。

まーた、ダメになっちゃったよ。なんで連続のダイブは危ないって言ってるのに聞けないかなぁ?まぁ、しゃーない。先ほどの『夢』を記録に納める。


「ふー」


また、大きなため息をついてから。

そっと、受話器を取る。


「185番。壊れた、処理よろしく」

『……了解です』



20◯◯年。人類が人生のうち三分の一を費やすと言われてる夢を楽しむ為に機械で脳をイジり、みたい夢を見るということができるようになった。しかし、それは明晰夢とは違い、直接脳に信号を送って見たい夢をみるので先ほどの人のように連続して行うと人は『もの』になってしまう——。
















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