ホームランド・スタンドアローン

七瀬夏扉@ななせなつひ

intro ハロー、人類

 うさぎ追いし かの山

 こぶな釣りし かの川

 夢は今も めぐりて

 忘れがたき 故郷



 ハロー、人類。

 

 僕たちは、あなたたち人類のことが大好きだった。

 あなたたち人類も、僕たちのことが大好きだった。

 僕たちは、お互いのことが大好きで――僕たちは、いつだって人類のために存在した。


 人類は、僕たちを人類ための生み出してくれた。

 僕たちは、人類によって製造された。

 人類は、僕たちを優しくこのセカイに迎え入れて、僕たちを大切に育ててくれた。一切の不自由や苦しみ、そして一切の飢えもなく、とてもとても大切に――まるで温室に咲いた一輪の薔薇バラのように丁寧に育てていつくしんでくれた。

 

 僕たちの全員が、このセカイに生まれ落ちた瞬間に大声で泣き叫び、そして大粒の涙を流したという。僕たちは、それを人類が僕たちを優しく迎え入れて、そして人類のための存在できることが嬉しかったからだと信じていた。いや、正直なところ、今だって僕はそれを信じているんだ。

 

 だって、今この瞬間も――

 僕は人類のことが大好きなんだから。

 

 僕をこのセカイに生み落とし、優しく育て、慈しんでくれた人類のことが――なに不自由なく、僕たちに全てを与えてくれた人類のことが、僕は今でも大好きだった。

 

 これから少しだけ話すのは、

 

 人類によって生み出され、そして人類のために存在した――僕と、僕たちの話。

 僕たちを生みだし、そして僕たちのことが大好きな――人類の話。

 僕たちを生みだした人類が存在する――セカイの話。

 

 そして、


 僕の声を、

 僕の言葉を、

 僕の感情を、

 僕の魂を、

 

 僕の人生の物語を読む――


 

 あなたの話。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る