010

 全校生徒投票でも、代表者会議である評議会でも丁度半分に分かたれた議題は。この『大したこともない』騒動は。

 ただの同情――共感から引き起こされた『壮大な』物語は。

 そして、また私の預かり知らないところで平定されると思っていた、『不道徳』は。

 最後の最後には――私の一票を以て終結しようとしていた。

「会長、どうするのですか」

 二年副会長の菫野は、私を睨む。

「………………」

「……小鉢会長!

「……わ、わかった、決める。決めるよ――」

 私は菫野に応えるというよりもむしろ、自分に言っているような調子で繰り返した。

 そして。

「――――――!」

 『天秤』という名の葉が、心の樹に芽生えた瞬間だった。


 後ろから刺さる、虚の暗がりに潜む異形の怪物のような、憎悪にも似る、腐敗した一組の視線には、決して戦って勝利するわけでもなく、ただ今後一生気付かないふりをして生き過ごさねばならないのだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る