第2話:一月

教室

「おはよう、あけましておめでとうなのです」

後ろの席の夏彦に少し遅めの新年のあいさつをし、席に着くキョン

「おう、あけおめ…結局。クリスマス以降予定合わずに始業式になってしまったな」

「ごめんね、この時期バイト先が書入れ時なのです。普段は掃除以外することないのですが」

「お前のバイト先っていったいどういう場所なんだ?」

「涼宮君、今日子ちゃん。あけましておめでとうございます」

「うん、あけましておめでとうなのです」

「おう、あけおめー」

「それで、今日子ちゃん」

「うん?何なのです?」

「これ、イギリスに住んでる叔父様から頂いたのですけど…今日子ちゃんこういう本好きでしたよね?」

そういい姫がカバンの中から一冊の本を取り出した

「ん?うん。わぁルーミン先生の英国限定出版の小説なのです」

「ルーミン?誰だそれ」

「今日子ちゃんが今好きな推理小説家ですよ。最近は一日ごとに性別が変わる名探偵が主人公の小説を書いていますよ」

「あぁ、少し前からテレビで予告やってるあのアニメ化作品か」

「なのですなのです!その人がイギリス滞在中執筆してそのままイギリスの出版社に持ち込んで書籍した作品なのです。海外から取り寄せするのはお金がかかるからあきらめてたわけで、まさかそれが今あたしの目の前に…」

「上げますよ」

「本当!?」

「えぇ、そのつもりで持ってきましたし」

「ありがとうなのです!」

「わっ、キ、今日子ちゃん!?」

「おまえ、テンションあがりすぎだろ」

「これがテンションあがらずにいられないわけで!諦めてた作品なわけで!!ルーミン先生の作品なわけで!!!」

「わかった、わかったから。ちょっとは落ち着け」

「皆さん明けましておめでとう…今日子さんどうされたんです?」

「翔君見てなのです!ルーミン先生の作品なわけで!」

「ん?おぉ!ビューティフルマーダーではないですか。今日子さん買われたんですか?」

「姫ちゃんからもらったわけで!」

「成程、今日子さんが読み終わった後でいいので僕に貸してもらっても良いですか?僕もその小説は気になっていたもので…」

「良いわけで!とても良いわけでなのです!!」


時がたち二時限前の休み時間

「で、それ読めるのか?」

HR前より落ち着いたが浮き足立ち気味のキョンに尋ねる夏彦

「そこは、頑張ってなのです」

「キョンちゃんの記憶力なら大丈夫ですよ。私も少しですが読みましたけど大体は理解できましたし」

「大川さんで大体だと俺だともう少しかかるかもな」

「?夏彦も読みたいのです?」

「いや、遠慮しとく頭使ってまで読書する気はないわ」

「そうなのですか…面白いのに」

「…代わりにその作者の普通のなら読んでも良いが?あるんだろ?」

外の景色を見ながら横目で尋ねる夏彦君

「あるのですよ。何がいいかな?やっぱりさっき話してた『探偵流巳』シリーズかな?それとも短編集の『光探偵の影の事件簿』とか…?姫ちゃん日暮くんどうしたのです?」

ニコニコ顔で二人を眺める視線に気付くキョンちゃん

「いえいえ、僕たちの事は御気になさらずに…」

「お二人で仲良くお話ししてくださいな。でももう少しで授業が始まりますので気持ち早めでお願いしますね。」

「ん?」「ハァ…」

0円スマイルを浮かべる二人に小首をかしげるキョンちゃんとやれやれと言わんばかりにため息をつく夏彦君

そんな感じでまだ寒い新学期の初日は4人にとっていつも通りに過ぎていくのであった


―続く―

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斉藤今日子ちゃんの消失 @kairyuukai

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