血に塗られた赤い部屋

そして、今に至る。

私はこの話を書き終わると、月の下の本の作者の元へ向かった。

「書き終えました。」

「どれ。」

執筆を片手でしながら本を読んでもらう。

「…フェザー。」

「まだ私をその名前で呼ぶことはできません。」

そうか。

「お前は、これを物語として書いたのか?それとも伝記を書いたのか?」

「それは、どう行った意味で…」

ぽんと机に本を置かれた。

「私が、体験したことを書きましたが…。」

「それじゃあ、お前だけの物語、もしくは伝記になるだろう。」

この部屋は伝記ではなく物語を求めている。

「もう一度だ。」

「えっ。」

月の下の本の作者はにこりと笑い、

「もう一度物語を書け。お前には物語のセンスがない。あぁ、そうだ。」

棚に手を伸ばすといくつかの無地の本を渡された。

「創作物語を書きなさい。その本の分のね。そして書き終わった時改めて、海鳥の執筆をするのだ。」

「こんなにですか!?」

また、ニヤリとして

「なぁに、俺や、五線譜の上の本の作者に比べたら薄い薄い。」

「はぁ。」

少し落ち込んでいると

「月の下の本の作者は、貴女を帰したくないみたい。」

「あ、五線譜の上の本の作者!」

どこか懐かしい顔をする娘。

「上手く書けるかな。」

「大丈夫よ。そして、美しく狂った物語にしましょう。」

そう言われて思い出す。

この部屋の住人は皆、狂っている。

そして床にいる地球儀の近くの本の作者。

何故、

何故彼はここに居るのだ?

「ノア。」

「何?姉さん」

そう呼ばれた。

ノア。

この方舟の作者。

そして、本の作者。

アルファやベータ、ガンマの父親。

そんな人が何故

本を変えて

ここに居るのか。

創作物語を書き終える前に

わかる日は来るのだろうか。

私には、わからなかった。



Normalend

又の名を

Prolog

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海鳥 五月雨 @MaizakuraINARI

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